醒睡笑 巻3 自堕落
芋掘り僧のありつるが、秋も最中(もなか)の月澄(つきす)みに、百姓出でて田を守(も)りゐたり。夜更け、物音せぬみぎり、笠を着、白き帷子(かたびら)を端折りたる男、さうけ1)と小桶とを持ちて来たりぬ。
百姓、不審なるものに思ひとがめければ、かの男言ふ、「俗人2)鰌(どじやう)すくふに、何のくせごとかあらうぞ」と。
一 いもほり僧のありつるか秋も最中の月澄(つきすみ) に百姓出て田をもりゐたり夜ふけ物を とせぬみきり笠をきしろき帷子をはし おりたる男さうけと小桶とをもちて来りぬ 百姓ふしんなる物におもひとがめけれは 彼男いふ俗(ぞく)人鰌(どじやう)すくふになにのくせ ことかあらふぞと/n3-38r