醒睡笑 巻3 文字知り顔
境1)の中浜に道海(だうかい)とて富める者あり。ちと晴れがましき客を請じ、朝食の膳を出だし、末座(ばつざ)にきと手をつくね、言ひけることこそ、腹筋(はらすぢ)なれ。
「西宮(さいくう)に人(にん)を遣(つかは)す。大風(たいふう)頻(しき)りに吹きて、新魚(しんぎよ)無也(むなり)。塩魚(えんぎよ)買来(ばいらい)不久力(ふぎふりき)」。
ただ、「西の宮へ人をやりたれば、大風が吹いて、新しい魚がおりない」と言はひで2)。
一 境(さかい)の中浜に道海(だうかい)とてとめる者ありちとはれ かましき客を請(しやう)じ朝食の膳を出し 末座(はつざ)にきと手をつくねいひける事こそはら/n3-7r
すぢなれ西宮(さいくう)に人(にん)を遣(つかは)す大風(たいふう)頻(しきり)に吹て 新魚(しんきよ)無也(むなり)塩魚(ゑんきよ)買来(はいらい)不久力(ふぎうりき) 唯西の宮へ人をやりたれは大風かふいてあたらしい魚かおりないといはひて/n3-7l