醒睡笑 巻3 文字知り顔
医者に向かつて、「白朮(びやくじゆつ)とは何を申すや」。「をけらといふ草なり」と。
こびたることに思ひ、客をまうけたる席に、中間(ちうげん)、かの草を縁のはしに持ち出で、「白朮を掘りて参りた」と言はせ、「そこにおけら1)」と言うてくすめり。
近ごろ蚊虻(もんもう)2)なる人、感にたへ、帰りて中間に教へおき、わざと人を呼び振舞ひけるに、中間、うち忘れ、「をけらを掘りて参りた」と。亭主よう言ふ顔にて、「そこに白朮せよ」と。
一 医者にむかつて白朮(ひやくじゆつ)とはなにを申やをけら といふ草なりとこひたる事におもひ客を まうけたる席(せき)に中間かの草をゑんのはし に持出白朮をほりて参りたといはせそこに をけらといふてくすめり近比蚊虻(もんもう)なる人/n3-5l
感にたへ帰りて中間にをしへおき態(わさと)人を よひふるまいけるに中間打わすれをけらを ほりて参りたと亭主よふいふかほにてそこに 白朮せよと/n3-6r