醒睡笑 巻3 文字知り顔
「笛(ふえ)の『え』はちぢみえ1)か、末(すゑ)のゑ2)か、いづれが良い」と言ふに、「されば定家3)の仮名遣いにも、源氏4)などにも、ちぢみえを書きたるは」。「いや横へ5)が良い」。「何とて」。「笛は横にして吹くほどに」。
そばにゐたる禅門、うかべたる体(てい)をし、「げにもげにも、尺八の八も横へじや」。
一 笛のえはちぢみえかすゑのゑかいづれかよひ といふにされは定家(ていか)のかなづかいにも源氏 なとにもちぢみえを書たるはいやよこへが よひなにとて笛(ゆへ)はよこにしてふくほどに そばに居(ゐ)たる禅門うかへたるていをし けにもけにも尺八の八もよこへじや/n3-4l