醒睡笑 巻2 賢だて
ぬからぬ顔したる男、大名のもとへ参る。「何とて久しく見えなんだぞ」。手をついて、「この一両月、癲癇気(てんかんけ)に取り紛れ不参(ふさん)つかまつり候ふ」と申し上げし。
友達と座を出づるに、「そちは咳気(がいき)をこそわづらひつれ。ありのまま申さずし、いらぬ病の名を言ひつることよ」。「いや、咳気は初心(しよしん)に誰も知りたり。ちととばして『てんかん』と言はいでは」。
賢達て 一 ぬからぬ顔したる男大名のもとへ参る何とて 久見へなんだそ手をついて此一両月癲 癇気に取紛不参仕候と申上し友達と 座を出るにそちは咳気をこそわつらひつれ ありのまま申さすしいらぬ病の名をいひつる 事よいや咳気は初心に誰もしりたりちと とはしててんかんといはひては/n2-47l