醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
ある者、饂飩(うどん)の出でたる席に、かたのごとく賜はり、あげくに言ふ、「方々まで実(み)ばかりを下さるれども、つひにこの花を見たことはござない。こなた1)になうてはあるまい。とてもの思ひ出に見参らせたい」と言ふ。「何事を言ふぞや」と問へば、「誰も知りて申すは、優曇華(うどんげ)の花」と。
一 ある者饂飩の出たる席にかたのことくたま はりあげくにいふ方々まて実はかりを下さる れとも終に此花を見た事は御座ないと なたになうてはあるまいとてもの思出に見 参らせたいといふ何事をいふそやととへは/n2-36l
誰もしりて申はうとんけのはなと/n2-37r