醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
三好中納言殿1)へ、昔甲(むかしかぶと)を持ちて来たり、見せ参らせたることあり。「これは異な物や。あまり甲の鉢(はち)大きなり」など褒貶(はうへん)の時、ちと鈍(どん)なる客人、手に取り見て、「さてさて結構にござある。召し置かれてよからん」と申す。「いらぬ物を何にせうぞ」と仰せあれば、「ただ常住甲(じやうぢうかぶと)にさしられよ」と。
一 三好中納言殿へむかし甲をもちて来りみせ 参らせたる事あり是はゐな物やあまり 甲の鉢大なりなど褒貶の時ちととんなる 客人手に取見て扨々けつかうに御座ある/n2-32r
めしをかれてよからんと申いらぬ物をなにに せうそと仰あれは唯常住甲にさしら れよと/n2-32l