醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
道行ぶりに向うより来る者を見れば、百八の数珠(じゆず)を首にかけ、高野笠(かうやがさ)のやうなるを着て歩む者あり。
うつけ者、これを見付け、手を打つて感ずる。「そなたが着たる笠は、ことのほか大きや。何としてその数珠をばうなじにかけられた」と問ふ。「いや、これはまづ数珠を首にかけて、後に笠を着て候ふ」と言ふたれば、「とかく物をば聞かいでは」と。
一 道行ぶりにむかふよりくる者を見れは百八の 数珠をくひにかけ高野笠の様なるをきて あゆむ者ありうつけものこれを見付手を/n2-31l
うつてかんずるそなたかきたる笠は事の 外大やなにとしてそのしゆずをはうなじに かけられたととふいやこれはまつしゆすを くひにかけて後に笠をきて候といふたれは とかく物をばきかいではと/n2-32r