醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
蒲生飛騨殿1)、所労(しよらう)すでに一大事なるとて、人々集まり気をのみゐたりし中に、うつとり二人、頭(かしら)を合はせささやきけるは、「せめて飛州の寿(ことぶき)三年つつがなかれかし」と歎きけるが、一人言ふ、「良き毒をととのへてあげたいことぢや」。「それは何としたる分別ぞや」。「さればよ。高い毒を飲めば当座に死なず、三年して死ぬといふほどに」。
一 蒲生飛騨殿所労すてに一大事なるとて人々 あつまり気をのみゐたりし中にうつとり 二人かしらをあはせささやきけるはせめて飛 州のことふき三年つつかなかれかしと歎 けるが一人いふよき毒をととのへてあげたい 事ちやそれはなにとしたる分別そやされは よたかい毒をのめば当座に死なす三年/n2-30l
してしぬといふほどに/n2-31r