醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
利根をよそにあづけたる亭主、なまじひに小便当(こべんたう)にて、使ふ者のあまたあれども、うつとりにし、朝起きなどする者なし。
ある時、中間(ちうげん)の名を呼ぶまではなく、われは寝てゐながら、「夜はほのぼのとあかさかや1)」と舞ひければ、内の者聞く聞く、「待てしばし、待てしばし。夜はまだ深きぞ。白むは花の陰なりけり2)」と。よい返答の。
一 利根をよそにあつけたる亭主なましゐに こ便当にてつかふ者のあまたあれともうつ/n2-26r
とりにしあさおきなとする者なし有時 中間の名をよふまてはなくわれはねて ゐなから夜はほのほのとあかさかやと舞 けれは内の者きくきくまてしばしまて しはし夜はまたふかきぞしらむは花の陰 なりけりとよい返答の/n2-26l