醒睡笑 巻1 謂へば謂はるる物の由来
「痩法師の酢好み」とは、八瀬(やせ)の寺は昔より禁酒にて酒を入れず。僧の中に酒を好みえこらへぬあり。常に土工李(とくり)を持ちて行きかよふ。もし人問ふことあれば、「酢にて候ふ」といふ。日を経ずかよひしげし。また問ふ時も同じ返事なるまま、諺(ことわざ)に言ひ習はし、やせの法師は酢好みや。
一 痩(やせ)法師の酢(す)このみとはやせの寺は昔より 禁(きん)酒にて酒をいれす僧の中に酒をこの みえこらへぬあり常(つね)に土工李をもちて行か よふ若(もし)人とふ事あれはすにて候といふ日を経 すかよひしけし又とふ時も同返事なるまま 諺(ことはさ)にいひならはしやせの法師はすこのみや/n1-11r