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text:yomeiuji:uji172

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text:yomeiuji:uji172 [2019/11/23 22:12] (現在)
Satoshi Nakagawa
ライン 6: ライン 6:
 **寂昭上人、飛鉢の事** **寂昭上人、飛鉢の事**
  
-いまはむかし、三川入道寂昭といふ人、唐に渡りて後、唐の王、やんごとなき聖どもをめしあつめて、堂をかざりて、僧膳をまうけて、経を講じ給けるに、王の給はく、「今日の斎莚は手ながの役あるべからず。をのをの我鉢を飛せやりて、物はうくべし」との給ふ。其心は、日僧を試んがためなり。+===== 校訂文 =====
  
-さて、諸僧、一座より次第に鉢を飛せて物をく。三入道、末座に着たり。その番にたりて、鉢を持てたんとす。「いかで鉢をやりてこそ、けめ」とて人々せいしとどめけり。寂昭申けるは、「鉢を飛するは別の法をおこなひてするわざなり。しかるに、寂昭、いまだ法を伝行はず。日本国においても、法行ふ人りけれど、末世にはおこなふ人なし。いかでか飛さん」とひてゐたるに、「日本の聖、鉢をそし、をそし」とめければ、日本の方に向て、祈念、「国の三宝神祇助給へ。恥せ給な」と念じ入てゐたるに、鉢、こまつぶりのやうにくるめきて、唐の僧の鉢よりもはやく飛て物をうけて帰ぬ+今は昔、三河入道寂昭((大江定基。寂照とも表記する。))といふ人、唐(もろこし)に渡りて後、唐の王((北宋の真宗、または仁宗。))、やんごとなき聖どもを召し集めて、堂を飾りて、僧膳をまうけて、経を講じ給ひけるに、王のたまはく、「今日の斎莚(さいえん)は、手長(てなが)の役あるべからず。おのおの、わが鉢を飛ばせやりて、物は受くべし」とのたまふ。その心は、日本僧を試さんがためなり。 
 + 
 +さて、諸僧、一座より次第に鉢を飛せて物をく。三入道、末座に着たり。その番にたりて、鉢を持たんとす。「いかで鉢をやりてこそ、けめ」とて人々しとどめけり。寂昭申けるは、「鉢を飛すること別の法をひてするわざなり。しかるに、寂昭、いまだこの法を伝行はず。日本国においても、この法行ふ人りけれど、末世にはふ人なし。いかでか飛さん」とひてゐたるに、「日本の聖、鉢し、し」とめければ、日本の方に向て、祈念いはく、「わが国の三宝神祇給へ。恥せ給な」と念じ入てゐたるほどに、鉢、こまつぶりのやうにくるめきて、唐の僧の鉢よりも速く飛びて、物を受けて帰りぬ。 
 + 
 +その時、王よりはじめて、「やんごとなき人なり」とて、拝みけるとぞ申し伝へたる。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  いまはむかし三川入道寂昭といふ人唐に渡りて後唐の 
 +  王やんことなき聖ともをめしあつめて堂をかさりて僧膳をま/下79オy411 
 + 
 +  うけて経を講し給けるに王の給はく今日の斎莚は手 
 +  なかの役あるへからすをのをの我鉢を飛せやりて物はうくへしとの 
 +  給ふ其心は日本僧を試んかためなりさて諸僧一座より次第に 
 +  鉢を飛せて物をうく三川入道末座に着たりその番にあたり 
 +  て鉢を持てたたんとすいかて鉢をやりてこそうけめとて人々 
 +  せいしととめけり寂昭申けるは鉢を飛する事は別の法をおこ 
 +  なひてするわさなりしかるに寂昭いまた此法を伝行はす日本国 
 +  においても此法行ふ人ありけれと末世にはおこなふ人なしいかてか 
 +  飛さんといひてゐたるに日本の聖鉢をそしをそしとせめけれは 
 +  日本の方に向て祈念して云我国の三宝神祇助給へ恥みせ 
 +  給なと念し入てゐたる程に鉢こまつふりのやうにくるめ 
 +  きて唐の僧の鉢よりもはやく飛て物をうけて帰ぬその時王 
 +  よりはしめて止事なき人也とておかみけるとそ申伝たる/下79ウy412
  
-その時、王よりはじめて、「止事なき人也」とて、おがみけるとぞ、申侍たる。 


text/yomeiuji/uji172.txt · 最終更新: 2019/11/23 22:12 by Satoshi Nakagawa