text:yomeiuji:uji060
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text:yomeiuji:uji060 [2018/03/08 21:03] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji060 [2018/03/08 21:26] (現在) – [第60話(巻4・第8話)進命婦、清水詣の事] Satoshi Nakagawa | ||
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**進命婦、清水詣の事** | **進命婦、清水詣の事** | ||
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今は昔、進命婦、若かりける時、常に清水((清水寺))へ参りける間、師の僧、清かりけり。八十の者なり。法華経を八万四千部、読み奉りたる者なり。 | 今は昔、進命婦、若かりける時、常に清水((清水寺))へ参りける間、師の僧、清かりけり。八十の者なり。法華経を八万四千部、読み奉りたる者なり。 | ||
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ここに弟子一人、進命婦のもとへ行きて、このことを言ふ時に、女、ほどなく来たれり。病者、頭(かしら)も剃らで、年月を送りたるあひだ、髭(ひげ)・髪、銀の針を立てたるやうにて、鬼のごとく、されども、この女、恐るる気色なくして言ふやう、「年ごろ頼み奉る心ざし浅からず。何ごとに候(さぶら)ふとも、いかでか仰せられんこと、そむき奉らん。御身くづほれさせ給はざりしさきに、などか仰せられざりし」と言ふ時に、この僧、かき起こされて、念珠を取りて、手をもみて言ふやう、「嬉しく来たらせ給ひたり。八万余部読み奉りたる法華経の、最第一の文をば、御前に奉る。俗を生ませ給はば、関白・摂政を生ませ給へ。女を生ませ給はば、女御・后を生ませ給へ、僧を生ませ給はば、法務の大僧正を生ませ給へ」と言ひ終りて、すなはち死にぬ。 | ここに弟子一人、進命婦のもとへ行きて、このことを言ふ時に、女、ほどなく来たれり。病者、頭(かしら)も剃らで、年月を送りたるあひだ、髭(ひげ)・髪、銀の針を立てたるやうにて、鬼のごとく、されども、この女、恐るる気色なくして言ふやう、「年ごろ頼み奉る心ざし浅からず。何ごとに候(さぶら)ふとも、いかでか仰せられんこと、そむき奉らん。御身くづほれさせ給はざりしさきに、などか仰せられざりし」と言ふ時に、この僧、かき起こされて、念珠を取りて、手をもみて言ふやう、「嬉しく来たらせ給ひたり。八万余部読み奉りたる法華経の、最第一の文をば、御前に奉る。俗を生ませ給はば、関白・摂政を生ませ給へ。女を生ませ給はば、女御・后を生ませ給へ、僧を生ませ給はば、法務の大僧正を生ませ給へ」と言ひ終りて、すなはち死にぬ。 | ||
- | その後、この女房、宇治殿((藤原頼通))に思はれ参らせて、はたして、京極大殿((藤原師実))、四条宮((藤原寛子))、三井の覚円座主をうみたてまつれりとぞ。 | + | その後、この女房、宇治殿((藤原頼通))に思はれ参らせて、はたして、京極大殿((藤原師実))、四条宮((藤原寛子))、三井の覚円座主を生み奉れりとぞ。 |
===== 翻刻 ===== | ===== 翻刻 ===== |
text/yomeiuji/uji060.txt · 最終更新: 2018/03/08 21:26 by Satoshi Nakagawa