text:yomeiuji:uji051
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text:yomeiuji:uji051 [2014/04/09 00:45] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji051 [2018/02/12 14:33] – [第51話(巻3・第19話)一条摂政、歌の事] Satoshi Nakagawa | ||
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- | ====== 第51話(巻3・第19話)一条摂政、哥の事 ====== | + | 宇治拾遺物語 |
+ | ====== 第51話(巻3・第19話)一条摂政、歌の事 ====== | ||
**一条摂政哥事** | **一条摂政哥事** | ||
- | **一条摂政、哥の事** | + | **一条摂政、歌の事** |
- | いまはむかし、一条摂政とは東三条殿の兄におはします。御かたちよりはじめ、心もちひなど、めでたく、ざえありさま、まことしくおはしまし、また色めかしく、女をもおほくごらんじけうぜさせ給けるに、すこしきやうきやうにおぼえさせ給ければ、御名をかくさせ給て「大蔵のぜうとよかげ」となのり、うへならぬ女のがりは、御ふみもつかはしける。けさうをさせ給、あはせ給もしけるに、皆人、さ心えて、しりまいらせたり。 | + | 今は昔、一条摂政((藤原伊尹))とは東三条殿((藤原兼家))の兄におはします。 |
- | やむごとなく、よき人のひめ君のもとへ、おはしましそめにけり。めのと母などをかたらひて、父にはしらせさせ給はぬほどに、ききつけて、いみじく腹たちて、母をせため、つまはじきをして、いたくのたまひければ、「さることなし」とあらがひて、「まだしきよしの文かきてたべ」とははぎみのわび申たりければ、 | + | 御形(かたち)より始め、心用ゐなど、めでたく、才(ざえ)・ありさま、まことしくおはしまし、また、色めかしく、女をも多く御覧じ興ぜさせ給ひけるに、少し軽々(きやうきやう)に思えさせ給ひければ、御名を隠させ給ひて、「大蔵の丞豊蔭(とよかげ)」と名乗り、上ならぬ女のがりは、御文(おんふみ)もつかはしける。懸想(けさう)せさせ給ひ、逢はせ給ひもしけるに、みな人、さ心得て、知り参らせたり。 |
- | 人しれず 身はいそげども 年をへて など[ぞト異本注記アリ]こえがたき 逢坂の関 | + | やむごとなく良き人の、姫君のもとへ、おはしまし初めにけり。乳母(めのと)・母などを語らひて、父には知らせさせ給はぬほどに、聞き付けて、いみじく腹立ちて、母をせため、爪弾きをして、いたくのたまひければ、「さることなし」とあらがひて、「まだしきよしの文、書きて賜べ」と、母君のわび申したりければ、 |
- | とて、つかはしたりければ、父にみすれば「さては、そらごとなりけり」と、おもひて、返し、ちちのしける | + | 人知れず身は急げども年を経てなど越えがたき逢坂の関 |
- | あづまぢに ゆきかふ人に あらぬ身は いつかは越む 逢坂の関 | + | とて、つかはしたりければ、父に見すれば、「さては、そらごとなりけり」と思ひて、返し、父のしける、 |
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+ | あづまぢに行きかふ人にあらぬ身はいつかは越えむ逢坂の関((『後撰和歌集』によると、小野好古女の作。したがって、この説話での「父」は小野好古ということになる。)) | ||
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+ | 「豊蔭((藤原伊尹を指す))見て、ほほ笑まれけんかし」と、御集((『一条摂政御集』))にあり。をかしく。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | いまはむかし一条摂政とは東三条殿の兄におはします御 | ||
+ | かたちよりはしめ心もちひなとめてたくさえありさままこと/59ウ122 | ||
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+ | しくおはしましまた色めかしく女をもおほくこらんしけうせ | ||
+ | させ給けるにすこしきやうきやうにおほえさせ給けれは御名をか | ||
+ | くさせ給て大蔵のせうとよかけとなのりうへならぬ女のかり | ||
+ | は御ふみもつかはしけるけさうせさせ給あはせ給もしける | ||
+ | に皆人さ心えてしりまいらせたりやむことなくよき人の | ||
+ | ひめ君のもとへおはしましそめにけりめのと母なとをかたら | ||
+ | ひて父にはしらせさせ給はぬほとにききつけていみしく | ||
+ | 腹たちて母をせためつまはしきをしていたくのたまひけれは | ||
+ | さることなしとあらかひてまたしきよしの文かきてたへとはは | ||
+ | きみのわひ申たりけれは | ||
+ | 人しれす身はいそけとも年をへてなと(そイ)こえかたき逢坂の関 | ||
+ | とてつかはしたりけれは父にみすれはさてはそらことなりけりと | ||
+ | おもひて返しちちのしける/60オy123 | ||
+ | |||
+ | あつまちにゆきかふ人にあらぬ身はいつかは越む逢坂の関 | ||
+ | とよかけみてほほえまれけんかしと御集にありおかしく/60ウy124 | ||
- | とよかげみて、ほほえまれけんかしと、御集にあり。おかしく。 |
text/yomeiuji/uji051.txt · 最終更新: 2018/03/08 21:22 by Satoshi Nakagawa