ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:yomeiuji:uji034

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
最新のリビジョン両方とも次のリビジョン
text:yomeiuji:uji034 [2014/09/28 01:46] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji034 [2017/12/02 11:59] Satoshi Nakagawa
行 6: 行 6:
 **藤大納言忠家、物言ふ女放屁の事** **藤大納言忠家、物言ふ女放屁の事**
  
-いまむかし、藤大納言忠家といひける人、いまだ殿上人におはしましける時、びびしき色このみなりける女房と、物いひて夜くるに、月はひるよりもあかかりけるにたへかねて、御すをうちかつぎて、なげしのうへにのぼりて、肩をかきて引せられけるに、髪をふりかけて「あな、さまあし」とひて、くるめきけるに、いとたかくならしてけり。女房はいふにもたへず、くたくたとして、しにけり。+、藤大納言忠家((藤原忠家))といひける人、いまだ殿上人におはしましける時、びびしき色みなりける女房ともの言ひてくるほどに、月はよりもかりけるにたへかねて、御簾(み)をうちかづきて、長押(なげし)にのぼりて、肩をかきてき寄せられけるほどに、髪をふりかけて「あな、さまあし」とひて、くるめきけるほどに、いと鳴()らしてけり。女房はいふにもたへず、くたくたとして、しにけり。
  
-大納言「心にもあひぬるかな。世にありても何にかはせん。出家せん」とて、御すのすそをすこしかきあぬきあしをしてうたひなく出家せんとおもひて二けんかり行程に、「その女房あやまちせんからに出家すきやうはあると思ふ心又つきてたたたたとはしりて出られにけり+この大納言「心ことにもあひぬるものかな。世にありても何にかはせん。出家せん」とて、御簾の裾(すそ)を少しかき上げて、ぬき足をして、「疑ひなく出家せん」と思ひて、二間ばかり行くほどに、「そもそも、その女房、あやまちせんからに、出家すべきやうやはある」と思ふ心、またつきて、たたたたと走りて、出でられにけり。 
 + 
 +女房はいかがなりけん。知らずとか。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  いまはむかし藤大納言忠家といひける人いまた殿上人におはしましける時 
 +  ひひしき色このみなりける女房と物いひて夜ふくる程に月はひるよりも 
 +  あかかりけるにたへかねて御すをうちかつきてなけしのうへにのほりて肩をかきて 
 +  引よせられける程に髪をふりかけてあなさまあしといひてくるめき 
 +  ける程にいとたかくならしてけり女房はいふにもたへすくたくたとしてよりふ 
 +  しにけり此大納言心うき事にもあひぬる物かな世にありても何にかはせん 
 +  出家せんとて御すのすそをすこしかきあてぬきあしをしてうた 
 +  なく出家せんとおもひて二けんかり行程に抑その女房あやまち 
 +  せんからに出家すきやうはあると思ふ心又つきてたたたたとはしりて 
 +  出られにけり女房はいかかなりけんしらすとか/43ウy90
  
-女房はいかがなりけん。しらずとか。 
text/yomeiuji/uji034.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:04 by Satoshi Nakagawa