text:yomeiuji:uji033
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text:yomeiuji:uji033 [2014/09/28 01:46] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji033 [2015/02/01 22:14] – [第33話(巻3・第1話)大太郎盗人の事] Satoshi Nakagawa | ||
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昔、大太郎とて、いみじき盗人の大将軍ありけり。それが京へのぼりて「物とりぬべき所あらば、入て物とらん」と思て、うかがひありきけるほどに、めぐりもあばれ、門などもかたかたはたうれたる、よこ様によせかけたる所の、あだげなるに、男といふものは一人もみえずして、女のかぎりにて、はり物多とりちらしてあるにあはせて、八丈うる物などあまたよび入て、きぬおほくとりいでて、えりかへさせつつ、物どもをかへば「物おほかりける所かな」と思て、たちどまりてみ入れば、おりしも風の簾を吹きあげたるに、すだれのうちになにの入たりとはみえねども、皮子のいとたかくうちつまれたるまへに、ふたあきて「絹なめり」とみゆる物とりちらしてあり。 | 昔、大太郎とて、いみじき盗人の大将軍ありけり。それが京へのぼりて「物とりぬべき所あらば、入て物とらん」と思て、うかがひありきけるほどに、めぐりもあばれ、門などもかたかたはたうれたる、よこ様によせかけたる所の、あだげなるに、男といふものは一人もみえずして、女のかぎりにて、はり物多とりちらしてあるにあはせて、八丈うる物などあまたよび入て、きぬおほくとりいでて、えりかへさせつつ、物どもをかへば「物おほかりける所かな」と思て、たちどまりてみ入れば、おりしも風の簾を吹きあげたるに、すだれのうちになにの入たりとはみえねども、皮子のいとたかくうちつまれたるまへに、ふたあきて「絹なめり」とみゆる物とりちらしてあり。 | ||
- | これをみて「うれしきわざかな天たうの我に物をたぶなりけり」と思て、走帰りて、八丈一疋人にかりもてきて「うる」とて、ちかくよりてみれば、皮子もおほかり。物はみえねど、うづたかく、ふたおほはれ、きぬなどもことのほかにあり、布うち散しなどして「いみじく物おほくありげなる所哉」と、みゆ。 | + | これをみて「うれしきわざかな天たうの我に物をたぶなりけり」と思て、走帰りて、八丈一疋人にかりもてきて「うる」とて、ちかくよりてみれば、内にも外にも男といふものは一人もなし。ただ女どものかきりして、みれば皮子もおほかり。物はみえねど、うづたかく、ふたおほはれ、きぬなどもことのほかにあり、布うち散しなどして「いみじく物おほくありげなる所哉」と、みゆ。 |
たかくいひて、八丈をばうらで、もちて帰てぬしにとらせて、同類どもに「かかる所こそあれ」といひてまはして、その夜きて、門にいらんとするに、たぎり湯をおもてにかくるやうにおぼえて、ふつとえいらず。 | たかくいひて、八丈をばうらで、もちて帰てぬしにとらせて、同類どもに「かかる所こそあれ」といひてまはして、その夜きて、門にいらんとするに、たぎり湯をおもてにかくるやうにおぼえて、ふつとえいらず。 |
text/yomeiuji/uji033.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:02 by Satoshi Nakagawa