ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:yomeiuji:uji028

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
次のリビジョン両方とも次のリビジョン
text:yomeiuji:uji028 [2014/09/27 18:10] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji028 [2015/01/31 02:27] – [第28話(巻2・第10話)袴垂、保昌に合ふ事] Satoshi Nakagawa
行 6: 行 6:
 **袴垂、保昌に合ふ事** **袴垂、保昌に合ふ事**
  
-昔、はかまだれとて、いみじき盗人の大将軍ありけり。十月斗に、きぬの用なりければ、「衣すこしまうけん」とてさるべき所所うかがひあるきけるに、夜中ばかりに人みなしづまりはててのち、月の朧なるにきぬあまたきたるなるぬしの、指貫のそはばさみて、きぬの狩衣めきたるきて、ただひとり笛吹て、ゆきもやらず、ねり行ば「あはれ。これこそ我にきぬえさせんとて出たる人なめり」と思て「走かかりてきぬをはがん」とおもふに、あやしく物のおそろしくおぼえければ、そひて二三町ばかりいけども我に人こそ付たると思たるけしきもなし。+昔、はかまだれとて、いみじき盗人の大将軍ありけり。十月斗に、きぬの用なりければ、「衣すこしまうけん」とてさるべき所所うかがひあるきけるに、夜中ばかりに人みなしづまりはててのち、月の朧なるにきぬあまたきたるなるぬしの、指貫のそはばさみて、きぬの狩衣めきたるきて、ただひとり笛吹て、ゆきもやらず、ねり行ば「あはれ。これこそ我にきぬえさせんとて出たる人なめり」と思て「走かかりてきぬをはがん」とおもふに、あやしく物のおそろしくおぼえければ、そひて二三町ばかりいけども我に人こそ付たると思たるけしきもなし。
  
 いよいよ笛を吹ていけば、「心みん」と思て、足をたかくして走よりたるに、笛を吹ながらみかへりたる気しき、とりかかるべくもおぼえざりければ、走のきぬ。かやうにあまたたび、とさまかうさまにするに、露ばかりもさはぎたるけしきなし。希有の人かなと思て十余町ばかりぐして行。 いよいよ笛を吹ていけば、「心みん」と思て、足をたかくして走よりたるに、笛を吹ながらみかへりたる気しき、とりかかるべくもおぼえざりければ、走のきぬ。かやうにあまたたび、とさまかうさまにするに、露ばかりもさはぎたるけしきなし。希有の人かなと思て十余町ばかりぐして行。
行 15: 行 15:
  
 「いみじかりし人の有様也」と、とらへられてのちかたりける。 「いみじかりし人の有様也」と、とらへられてのちかたりける。
 +
text/yomeiuji/uji028.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:00 by Satoshi Nakagawa