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text:yomeiuji:uji020 [2017/12/20 23:57]
Satoshi Nakagawa [第20話(巻2・第2話)静観僧正、祈雨法験の事]
text:yomeiuji:uji020 [2018/03/18 19:15] (現在)
Satoshi Nakagawa [校訂本文]
ライン 10: ライン 10:
 今は昔、延喜の御時((醍醐天皇の御代の意。))、旱魃(かんばつ)したりけり。 今は昔、延喜の御時((醍醐天皇の御代の意。))、旱魃(かんばつ)したりけり。
  
-六十人の貴僧を召して、大般若経読ましめ給ひけるに、僧ども黒煙(くろけぶり)を立てて、「しるしあらはさん」と祈りけれども、いたくのみ晴れまさりて、日強く照りければ、御門((醍醐天皇))をはじめて、大臣・公卿・百姓人民、このことよりほかの歎きなかりけれ。+六十人の貴僧を召して、大般若経読ましめ給ひけるに、僧ども黒煙(くろけぶり)を立てて、「験(しるし)あらはさん」と祈りけれども、いたくのみ晴れまさりて、日強く照りければ、御門((醍醐天皇))をはじめて、大臣・公卿・百姓人民、このことよりほかの歎きなかりけれ。
  
-蔵人頭を召し寄せて、静観僧正((増命))に仰せ下さるるやう、「ことさら思しさるるやうあり。かくのごとく、方々に御祈れども、させるしるしなし。座を立ちて、別に壁のもとに立ちて祈れ。思し召すやうあれば、とりわき仰せ付くるなり」と仰せ下しければ、静観僧正、その時は律師にて、上に僧都・僧正・上臈どもおはしけれども、面目かぎりなくて、南殿の御階(みはし)より下りて、屏(へい)のもとに北向きに立ちて、香炉とりくびりて、額に香煙を当てて、祈誓し給ふこと、見るひとさへ苦しく思ひけり。+蔵人頭を召し寄せて、静観僧正((増命))に仰せ下さるるやう、「ことさら思しさるるやうあり。かくのごとく、方々に御祈れども、させるなし。座を立ちて、別に壁のもとに立ちて祈れ。思し召すやうあれば、とりわき仰せ付くるなり」と仰せ下しければ、静観僧正、その時は律師にて、上に僧都・僧正・上臈どもおはしけれども、面目かぎりなくて、南殿の御階(みはし)より下りて、屏(へい)のもとに北向きに立ちて、香炉とりくびりて、額に香煙を当てて、祈誓し給ふこと、見るひとさへ苦しく思ひけり。
  
 暑き日の、しばしもえさし出でぬに、涙を流し、黒煙を立てて、祈請し給ひければ、香炉の煙、空へ上りて、扇ばかりの黒雲になる。上達部は南殿に並び居、殿上人は宜陽殿に立ちて見るに、上達部の御前は美福門よりのぞく。 暑き日の、しばしもえさし出でぬに、涙を流し、黒煙を立てて、祈請し給ひければ、香炉の煙、空へ上りて、扇ばかりの黒雲になる。上達部は南殿に並び居、殿上人は宜陽殿に立ちて見るに、上達部の御前は美福門よりのぞく。


text/yomeiuji/uji020.txt · 最終更新: 2018/03/18 19:15 by Satoshi Nakagawa