text:yomeiuji:uji020
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text:yomeiuji:uji020 [2017/11/03 11:24] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji020 [2018/03/18 19:15] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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**静観僧正、祈雨法験の事** | **静観僧正、祈雨法験の事** | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
今は昔、延喜の御時((醍醐天皇の御代の意。))、旱魃(かんばつ)したりけり。 | 今は昔、延喜の御時((醍醐天皇の御代の意。))、旱魃(かんばつ)したりけり。 | ||
- | 六十人の貴僧を召して、大般若経読ましめ給ひけるに、僧ども黒煙(くろけぶり)を立てて、「しるしあらはさん」と祈りけれども、いたくのみ晴れまさりて、日強く照りければ、御門((醍醐天皇))をはじめて、大臣・公卿・百姓人民、このことよりほかの歎きなかりけれ。 | + | 六十人の貴僧を召して、大般若経読ましめ給ひけるに、僧ども黒煙(くろけぶり)を立てて、「験(しるし)あらはさん」と祈りけれども、いたくのみ晴れまさりて、日強く照りければ、御門((醍醐天皇))をはじめて、大臣・公卿・百姓人民、このことよりほかの歎きなかりけれ。 |
- | 蔵人頭を召し寄せて、静観僧正((増命))に仰せ下さるるやう、「ことさら思しめさるるやうあり。かくのごとく、方々に御祈れども、させるしるしなし。座を立ちて、別に壁のもとに立ちて祈れ。思し召すやうあれば、とりわき仰せ付くるなり」と仰せ下しければ、静観僧正、その時は律師にて、上に僧都・僧正・上臈どもおはしけれども、面目かぎりなくて、南殿の御階(みはし)より下りて、屏(へい)のもとに北向きに立ちて、香炉とりくびりて、額に香煙を当てて、祈誓し給ふこと、見るひとさへ苦しく思ひけり。 | + | 蔵人頭を召し寄せて、静観僧正((増命))に仰せ下さるるやう、「ことさら思し召さるるやうあり。かくのごとく、方々に御祈れども、させる験なし。座を立ちて、別に壁のもとに立ちて祈れ。思し召すやうあれば、とりわき仰せ付くるなり」と仰せ下しければ、静観僧正、その時は律師にて、上に僧都・僧正・上臈どもおはしけれども、面目かぎりなくて、南殿の御階(みはし)より下りて、屏(へい)のもとに北向きに立ちて、香炉とりくびりて、額に香煙を当てて、祈誓し給ふこと、見るひとさへ苦しく思ひけり。 |
暑き日の、しばしもえさし出でぬに、涙を流し、黒煙を立てて、祈請し給ひければ、香炉の煙、空へ上りて、扇ばかりの黒雲になる。上達部は南殿に並び居、殿上人は宜陽殿に立ちて見るに、上達部の御前は美福門よりのぞく。 | 暑き日の、しばしもえさし出でぬに、涙を流し、黒煙を立てて、祈請し給ひければ、香炉の煙、空へ上りて、扇ばかりの黒雲になる。上達部は南殿に並び居、殿上人は宜陽殿に立ちて見るに、上達部の御前は美福門よりのぞく。 |
text/yomeiuji/uji020.1509675843.txt.gz · 最終更新: 2017/11/03 11:24 by Satoshi Nakagawa