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text:yomeiuji:uji014 [2014/09/27 17:19] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji014 [2017/12/20 23:54] (現在) – [第14話(巻1・第14話)小藤太、聟におどされたる事] Satoshi Nakagawa
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 **小藤太、聟におどされたる事** **小藤太、聟におどされたる事**
  
-これも今は昔、源大納言定房といひける人の許に、小藤太と云侍ありけり。やがて女房にあひぐしてぞありける。むすめも女房にてつかはれけり。この小藤太は、殿の沙汰をしければ、三とほり四通に居ひろげてぞありける。+===== 校訂本文 =====
  
-此女の女に、なまりやうけしのかよひけるありけり。よひに忍びて局へ入にけり。暁より雨ふりて、え帰らで、局に忍てふしたりけり。此女の女房は、うへへのぼりけり。此聟の君、屏風を立まはして《ね》たりける。春雨いつとなくふりて、帰べきやうなく、ふしたけるに、のしうとの小藤太「此聟の君、つれづれにておすらん」とてさかな折敷にすへて持て、いまかた手に提に酒入て「ゑんよりいらんは、人みつべ」と思ておくの方よりりげなくもて行くに、此聟の君はきぬを引かつぎて、のけざまに臥たりけ+これも今は昔、源大納言定((源定房))といひける人のもとに、小藤太といふ侍ありけり。やがて、女房にあひ具してぞありける。女房に使はれけこの小藤太は、殿の沙汰をしければ三通四通りに居広げてぞありけ
  
-女房のとくおりよかし」と、つれづれにおもひてしたりけるに、おくかたより遣戸をけければ、うたがひなく「女房のうへよりおるるぞ」と思て、きぬをば顔にかつぎながら、あの物をかきだして、腹をそらして、けしけしとこしければ、小藤太おびえてなされかへりけるに、さかなも打ち《し酒もさながらうちこぼして、大ひげをささげて、のけざまにふしてたをれたり+この娘の女房に、生良家子(なまりやうけし)の通ひけるありけり。宵(よひ)に忍びて、局へ入りにけり。暁より雨降りて、え帰らで、局に忍びて臥したりけり。この娘の女房は、上へのぼりにけり。この聟の君、屏風を立て回して寝たりける。 
 + 
 +春雨、いつとなく降りて、帰るべきやうもなくて、臥したりけるに、この舅(しうと)の小藤太、この聟の君、つれづれにておはすらん」とて、肴、折敷(をしき)にすゑて持て、いま片手に、提(ひさげ)に酒を入れて「縁より入らんは、人、見つべし」と思ひて、奥の方より、さりげなくて持(も)て行くに、この聟の君は、衣(きぬ)を引きかづきて、のけざまに臥したりけり。 
 + 
 +「この女房のとくおりよかし」と、つれづれにひてしたりけるほどに、より遣戸をけければ、ひなく「この女房のよりおるるぞ」と思て、をば顔にかづきながら、あの物をかきだして、腹をそらして、けしけしとこしければ、小藤太おびえてされかへりけるほどに、も打らし酒もさながらうちこぼして、大ひげをささげて、のけざまに伏して倒れたり。頭(かしら)を荒う打ちて、まくれ入りて臥せりけりとか。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今は昔源大納言定房といひける人の許に小藤太と云/15ウy34 
 + 
 +  侍ありけりやかて女房にあひくしてそありけるむすめも女房 
 +  にてつかはれけりこの小藤太は殿の沙汰をしけれは三とほり四通に 
 +  居ひろけてそありける此女の女房になまりやうけしのかよひける 
 +  ありけりよひに忍ひて局へ入にけり暁より雨ふりてえ帰らて局に 
 +  忍てしたりけり此女の女房はうへへのほりにけり此聟の君屏 
 +  風を立まはしてりける春雨いつとなくふりて帰へきやうも 
 +  なくてふしたりけるにこのしうとの小藤太此聟の君つれつれにて 
 +  おはすらんとてさかな折敷にすへて持ていまかた手に提に酒入て 
 +  ゑんよりいらんは人みつへしと思ておくの方よりさりけなくてもて 
 +  行くに此聟の君はきぬを引かつきてのけさまに臥たりけり此女房 
 +  のとくおりよかしとつつれにおもひてふしたりける程におくのかたより 
 +  遣戸をあけけれはうたかひなく此女房のうへよりおるるそと思てきぬ 
 +  をは顔にかつきなからあの物をかきいたして腹をそらしてけしけしとおこし/16オy35 
 + 
 +  けれは小藤太おひえてなけされかへりける程にさかなも打ちらし 
 +  酒もさなからうちこほして大ひけをささけてのけさまにふし 
 +  てたをれたりかしらをあらう打てまくれ入てふせりけりとか/16ウy36
  
-かしらをあらう打て、まくれ入てふせりけり、とか。 
text/yomeiuji/uji014.1411805964.txt.gz · 最終更新: 2014/09/27 17:19 by Satoshi Nakagawa