text:yomeiuji:uji014
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text:yomeiuji:uji014 [2014/04/07 19:37] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji014 [2017/12/20 23:54] (現在) – [第14話(巻1・第14話)小藤太、聟におどされたる事] Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 宇治拾遺物語 | ||
====== 第14話(巻1・第14話)小藤太、聟におどされたる事 ====== | ====== 第14話(巻1・第14話)小藤太、聟におどされたる事 ====== | ||
**小藤太聟ニオトセレタル事** | **小藤太聟ニオトセレタル事** | ||
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**小藤太、聟におどされたる事** | **小藤太、聟におどされたる事** | ||
- | これも今は昔、源大納言定房といひける人の許に、小藤太と云侍ありけり。やがて女房にあひぐしてぞありける。むすめも女房にてつかはれけり。この小藤太は、殿の沙汰をしければ、三とほり四通に居ひろげてぞありける。 | + | ===== 校訂本文 ===== |
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+ | これも今は昔、源大納言定房((源定房))といひける人のもとに、小藤太といふ侍ありけり。やがて、女房にあひ具してぞありける。娘も女房にて使はれけり。この小藤太は、殿の沙汰をしければ、三通り四通りに居広げてぞありける。 | ||
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+ | この娘の女房に、生良家子(なまりやうけし)の通ひけるありけり。宵(よひ)に忍びて、局へ入りにけり。暁より雨降りて、え帰らで、局に忍びて臥したりけり。この娘の女房は、上へのぼりにけり。この聟の君、屏風を立て回して寝たりける。 | ||
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+ | 春雨、いつとなく降りて、帰るべきやうもなくて、臥したりけるに、この舅(しうと)の小藤太、「この聟の君、つれづれにておはすらん」とて、肴、折敷(をしき)にすゑて持て、いま片手に、提(ひさげ)に酒を入れて「縁より入らんは、人、見つべし」と思ひて、奥の方より、さりげなくて持(も)て行くに、この聟の君は、衣(きぬ)を引きかづきて、のけざまに臥したりけり。 | ||
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+ | 「この女房の、とくおりよかし」と、つれづれに思ひて臥したりけるほどに、奥の方より、遣戸を開けければ、疑ひなく「この女房の上よりおるるぞ」と思ひて、衣をば顔にかづきながら、あの物をかき出だして、腹をそらして、けしけしと起こしければ、小藤太、おびえて、なけされかへりけるほどに、肴も打散らし、酒もさながらうちこぼして、大ひげをささげて、のけざまに伏して倒れたり。頭(かしら)を荒う打ちて、まくれ入りて臥せりけりとか。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | これも今は昔源大納言定房といひける人の許に小藤太と云/15ウy34 | ||
- | 此女の女房に、なまりやうけしのかよひけるありけり。よひに忍びて局へ入にけり。暁より雨ふりて、え帰らで、局に忍てふしたりけり。此女の女房は、うへへのぼりにけり。此聟の君、屏風を立まはして《ね》たりける。春雨いつとなくふりて、帰べきやうもなくて、ふしたりけるに、このしうとの小藤太「此聟の君、つれづれにておはすらん」とて、さかな折敷にすへて持て、いまかた手に提に酒を入て「ゑんよりいらんは、人みつべし」と思ておくの方より、さりげなくてもて行くに、此聟の君はきぬを引かつぎて、のけざまに臥たりけり。 | + | 侍ありけりやかて女房にあひくしてそありけるむすめも女房 |
+ | にてつかはれけりこの小藤太は殿の沙汰をしけれは三とほり四通に | ||
+ | 居ひろけてそありける此女の女房になまりやうけしのかよひける | ||
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+ | のとくおりよかしとつれつれにおもひてふしたりける程におくのかたより | ||
+ | 遣戸をあけけれはうたかひなく此女房のうへよりおるるそと思てきぬ | ||
+ | をは顔にかつきなからあの物をかきいたして腹をそらしてけしけしとおこし/16オy35 | ||
- | 「此女房のとくおりよかし」と、つれづれにおもひてふしたりける程に、おくのかたより遣戸をあけければ、うたがひなく「此女房のうへよりおるるぞ」と思て、きぬをば顔にかつぎながら、あの物をかきいだして、腹をそらして、けしけしとおこしければ、小藤太おびえてなげされかへりける程に、さかなも打ち《ら》し酒もさながらうちこぼして、大ひげをささげて、のけざまにふしてたをれたり。 | + | |
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- | かしらをあらう打て、まくれ入てふせりけり、とか。 |
text/yomeiuji/uji014.1396867035.txt.gz · 最終更新: 2014/04/07 19:37 by Satoshi Nakagawa