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text:yomeiuji:uji014 [2017/10/23 15:27] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji014 [2017/10/23 15:38] – [第14話(巻1・第14話)小藤太、聟におどされたる事] Satoshi Nakagawa
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 これも今は昔、源大納言定房((源定房))といひける人のもとに、小藤太といふ侍ありけり。やがて、女房にあひ具してぞありける。娘も女房にて使はれけり。この小藤太は、殿の沙汰をしければ、三通り四通りに居広げてぞありける。 これも今は昔、源大納言定房((源定房))といひける人のもとに、小藤太といふ侍ありけり。やがて、女房にあひ具してぞありける。娘も女房にて使はれけり。この小藤太は、殿の沙汰をしければ、三通り四通りに居広げてぞありける。
  
-この娘の女房に、生良家子(なまりやうけし)の通ひけるありけり。宵(よひ)に忍びて、局へ入りにけり。暁より雨降りて、え帰らで、局に忍びて臥したりけり。この娘の女房は、上へりにけり。この聟の君、屏風を立て回して寝たりける。+この娘の女房に、生良家子(なまりやうけし)の通ひけるありけり。宵(よひ)に忍びて、局へ入りにけり。暁より雨降りて、え帰らで、局に忍びて臥したりけり。この娘の女房は、上へのぼりにけり。この聟の君、屏風を立て回して寝たりける。
  
 春雨、いつとなく降りて、帰るべきやうもなくて、臥したりけるに、この舅(しうと)の小藤太、「この聟の君、つれづれにておはすらん」とて、肴、折敷(をしき)にすゑて持て、いま片手に、提(ひさげ)に酒を入れて「縁より入らんは、人、見つべし」と思ひて、奥の方より、さりげなくて持(も)て行くに、この聟の君は、衣(きぬ)を引きかづきて、のけざまに臥したりけり。 春雨、いつとなく降りて、帰るべきやうもなくて、臥したりけるに、この舅(しうと)の小藤太、「この聟の君、つれづれにておはすらん」とて、肴、折敷(をしき)にすゑて持て、いま片手に、提(ひさげ)に酒を入れて「縁より入らんは、人、見つべし」と思ひて、奥の方より、さりげなくて持(も)て行くに、この聟の君は、衣(きぬ)を引きかづきて、のけざまに臥したりけり。
  
-「この女房の、とくりよかし」と、つれづれに思ひて臥したりけるほどに、奥の方より、遣戸を開けければ、疑ひなく「この女房の上よりるるぞ」と思ひて、衣をば顔にかづきながら、あの物をかき出だして、腹をそらして、けしけしと起しければ、小藤太、おびえて、なけされかへりけるほどに、肴も打散らし、酒もさながらうちこぼして、大ひげをささげて、のけざまに伏して倒れたり。頭(かしら)を荒う打ちて、まくれ入りて臥せりけりとか。+「この女房の、とくりよかし」と、つれづれに思ひて臥したりけるほどに、奥の方より、遣戸を開けければ、疑ひなく「この女房の上よりるるぞ」と思ひて、衣をば顔にかづきながら、あの物をかき出だして、腹をそらして、けしけしと起しければ、小藤太、おびえて、なけされかへりけるほどに、肴も打散らし、酒もさながらうちこぼして、大ひげをささげて、のけざまに伏して倒れたり。頭(かしら)を荒う打ちて、まくれ入りて臥せりけりとか。
  
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text/yomeiuji/uji014.txt · 最終更新: 2017/12/20 23:54 by Satoshi Nakagawa