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text:yamato:u_yamato139
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text:yamato:u_yamato139 [2017/09/04 21:40] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +大和物語
 +====== 第139段 先帝の御時に承香殿の御息所の御曹司に中納言の君といふ人・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +先帝((醍醐天皇))の御時に、承香殿の御息所((光孝天皇皇女源和子))の御曹司に、中納言の君といふ人さぶらひけり。それを、故兵部卿の宮((陽成天皇皇子元良親王))、若男(わかおとこ)にて、一の宮と聞こえて、色好み給ひけるころ、承香殿はいと近きほどになんありける。「らうある、をかしき人々あり」と聞き給ひて、ものなどのたまひかはしけり。
 +
 +さりけるころほひ、この中納言の君に、忍びて寝給ひそめてけり。時々おはしましてのち、この宮、をさをさ問ひ給はざりけり。
 +
 +さるころ、女のもとより詠みて奉りたりける。
 +
 +  人をとくあくた川てふ津の国のなにはたがはぬ君にざりける
 +
 +かくてものも食はで、泣く泣く病になりて、恋ひ奉りける。
 +
 +かの承香殿前の松に、雪の降りかかりたりけるを折りて、かくなん聞こえ奉りたりける。
 +
 +  来ぬ人をまつの葉に降る白雪の消えこそかへれあはぬ思ひに
 +
 +とてなん、「ゆめゆめこの雪落とすな」と使に言ひてなん、奉りける。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  先帝の御ときに承香殿のみやす
 +  ところの御さうしに中納言の君と
 +  いふひとさふらひけりそれをこひや/d24r
 +
 +  うふきやうの宮わかおとこにて
 +  一のみやときこえていろこのみたまひ
 +  けるころ承香殿はいとちかきほとに
 +  なんありけるらうあるをかしき
 +  ひとひとありときき給てものなとの
 +  たまひかはしけりさりけるころを
 +  いこの中納言のきみにしのひてね給
 +  そめてけりときときおはしましての
 +  ちこのみやをさをさとひたまはさり
 +  けりさるころ女のもとよりよ
 +  みてたてまつりたりける/d24l
 +
 +    ひとをとくあくたかはてふつのくに
 +    のなにはたかはぬきみにさりける
 +  かくてものもくはてなくなくやまひに
 +  なりてこひたてまつりけるかの
 +  承香殿まへのまつにゆきのふりかかり
 +  たりけるををりてかくなんきこ
 +  えたてまつりたりける
 +    こぬひとをまつの葉にふるしらゆ
 +    きのきえこそかへれあはぬおもひに
 +  とてなんゆめゆめこのゆきおとすなと
 +  つかひにいひてなんたてまつりける/d25r
  
text/yamato/u_yamato139.txt · 最終更新: 2017/09/04 21:40 by Satoshi Nakagawa