text:towazu:towazu2-02
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text:towazu:towazu2-02 [2019/05/06 15:53] – Satoshi Nakagawa | text:towazu:towazu2-02 [2019/05/06 16:08] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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ことに善勝寺の大納言、いつものことなれば、われ一人と申して、「さても、この女房の名字は誰々ぞ。急ぎ承りて、罪科のやうをも、公卿一同にはからひ申すべし」と申さるる折、御所、「一人ならぬ罪科は、親類かかるべしや」と、御尋ねあり。「申すに及ばず候ふ。六親と申して、みなかかり候ふ」など、面々に申さるる折、「まさしく、われを打ちたるは、中院大納言が女(むすめ)、四条大納言隆親が孫、善勝寺の大納言隆顕の卿が姪と申すやらん。また、随分養子と聞こゆれば、御女と申すべきにや。二条殿の御局の御しごとなれば、まづ一番に、人の上ならずやあらん」と仰せ出だされたれば、御前に候ふ公卿、みな一声に笑ひののしる。 | ことに善勝寺の大納言、いつものことなれば、われ一人と申して、「さても、この女房の名字は誰々ぞ。急ぎ承りて、罪科のやうをも、公卿一同にはからひ申すべし」と申さるる折、御所、「一人ならぬ罪科は、親類かかるべしや」と、御尋ねあり。「申すに及ばず候ふ。六親と申して、みなかかり候ふ」など、面々に申さるる折、「まさしく、われを打ちたるは、中院大納言が女(むすめ)、四条大納言隆親が孫、善勝寺の大納言隆顕の卿が姪と申すやらん。また、随分養子と聞こゆれば、御女と申すべきにや。二条殿の御局の御しごとなれば、まづ一番に、人の上ならずやあらん」と仰せ出だされたれば、御前に候ふ公卿、みな一声に笑ひののしる。 | ||
- | 「年の始めに女房流罪せられんも、そのわづらひなり。ゆかりまてその咎(とが)あらんも、なほわづらひなり。昔もさることあり。急ぎ贖(あが)ひ申さるべし」と、ひしめかる。その折申す、「これ、身として思ひよらず候ふ。十五日に、あまりに御所強く打たせおはしまし候ふのみならず、公卿・殿上人を召し集めて打たせられ候ひしこと、本意(ほい)なく思ひ参らせ候ひしかども、身、数ならず候へば、思ひよる方なく候ひしを、東の御方、『この恨み、思ひ返し参らせん。同心せよ」と候ひしかば、『さ承はり候ひぬ』と申して、うち参らせて候ひし時に、われ一人罪に当たるべきに候はず」と申せども、「何ともあれ、まさしく君の御身を杖を当て参らせたるものに過ぎたることあるまじ」とて、御贖ひに定まる。 | + | 「年の始めに女房流罪せられんも、そのわづらひなり。ゆかりまてその咎(とが)あらんも、なほわづらひなり。昔もさることあり。急ぎ贖(あが)ひ申さるべし」と、ひしめかる。その折申す、「これ、身として思ひよらず候ふ。十五日に、あまりに御所強く打たせおはしまし候ふのみならず、公卿・殿上人を召し集めて打たせられ候ひしこと、本意(ほい)なく思ひ参らせ候ひしかども、身、数ならず候へば、思ひよる方なく候ひしを、東の御方、『この恨み、思ひ返し参らせん。同心せよ』と候ひしかば、『さ承はり候ひぬ』と申して、うち参らせて候ひし時に、われ一人罪に当たるべきに候はず」と申せども、「何ともあれ、まさしく君の御身を杖を当て参らせたるものに過ぎたることあるまじ」とて、御贖ひに定まる。 |
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text/towazu/towazu2-02.1557125623.txt.gz · 最終更新: 2019/05/06 15:53 by Satoshi Nakagawa