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text:towazu:towazu1-01 [2019/03/07 17:27] – 作成 Satoshi Nakagawatext:towazu:towazu1-01 [2019/03/09 12:28] (現在) Satoshi Nakagawa
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 とはずがたり とはずがたり
 ====== 巻1 1 呉竹の一夜に春の立つ霞・・・ ====== ====== 巻1 1 呉竹の一夜に春の立つ霞・・・ ======
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 呉竹(くれたけ)の一夜に春の立つ霞、今朝しも待ち出で顔に花を折り、匂ひを争ひて並み居たれば、われも人なみなみにさし出でたり。莟(つぼみ)紅梅にやあらむ七つに、紅(くれなゐ)の袿(うちぎ)、萌黄(もよぎ)の表着(うはぎ)、赤色の唐衣(からぎぬ)などにてありしやらん。梅唐草を浮き織りたるに、小袖に唐垣(からかき)に梅を縫ひて侍りしをぞ着たりし。 呉竹(くれたけ)の一夜に春の立つ霞、今朝しも待ち出で顔に花を折り、匂ひを争ひて並み居たれば、われも人なみなみにさし出でたり。莟(つぼみ)紅梅にやあらむ七つに、紅(くれなゐ)の袿(うちぎ)、萌黄(もよぎ)の表着(うはぎ)、赤色の唐衣(からぎぬ)などにてありしやらん。梅唐草を浮き織りたるに、小袖に唐垣(からかき)に梅を縫ひて侍りしをぞ着たりし。
  
-今日の御薬には、大納言((父、久我雅忠))、陪膳(ばいぜむ)に参らる。外様の式果てて、また内へ召し入れられて、台盤所の女房たちなど召されて、如法折れこだれたる九献の式あるに((「あるに」は底本「あきに」。文脈により訂正。))、大納言、三々九とて、外様にても九返(ここのかへり)の献杯にてありけるに、「また内々(うちうち)の御ことにも、その数にてこそ」と申されけれど、も、「このたびは九三にてあるべし」と仰せありて、如法、上下酔(ゑ)ひ過ぎさせおはしましたる後、御所の御土器(かはらけ)を大納言に給はすとて、「この春よりは、たのむの雁もわが方(かた)によ」とて給ふ。+今日の御薬には、大納言((父、久我雅忠))、陪膳(ばいぜむ)に参らる。外様の式果てて、また内へ召し入れられて、台盤所の女房たちなど召されて、如法折れこだれたる九献の式あるに((「あるに」は底本「あきに」。文脈により訂正。))、大納言、三々九とて、外様にても九返(ここのかへり)の献杯にてありけるに、「また内々(うちうち)の御ことにも、その数にてこそ」と申されけれど、も、「このたびは九三にてあるべし」と仰せ((御深草院))ありて、如法、上下酔(ゑ)ひ過ぎさせおはしましたる後、御所の御土器(かはらけ)を大納言に給はすとて、「この春よりは、たのむの雁もわが方(かた)によ」とて給ふ。
  
 ことさらかしこまりて、九三返し給ひて、まかり出づるに、何とやらん、忍びやかに仰せらるることありとは見れど、何事とはいかでか知らむ。 ことさらかしこまりて、九三返し給ひて、まかり出づるに、何とやらん、忍びやかに仰せらるることありとは見れど、何事とはいかでか知らむ。
  
-拝礼など果てて後、局(つぼね)へすべりたるに、「昨日の雪も今日よりは跡踏み付けん行末」など書きて御文あり。紅の薄様八つ・濃き単(ひとへ)・萌黄の表着・唐衣・袴三つ、小袖二つ、小袖など、平包みにてあり。いと思はずにむつかしければ、返しつかはすに、袖の上に薄様の札にてありけり。見れば、+拝礼など果てて後、局(つぼね)へすべりたるに、「昨日の雪も今日よりは跡踏み付けん行末」など書きて御文あり。紅の薄様八つ・濃き単(ひとへ)・萌黄の表着・唐衣・袴三つ、小袖二つ、小袖など、平包みにてあり。いと思はずにむつかしければ、返しつかはすに、袖の上に薄様の札にてありけり。見れば、
  
   翼こそ重ぬることのかなはずと着てだになれよ鶴の毛衣(けごろも)   翼こそ重ぬることのかなはずと着てだになれよ鶴の毛衣(けごろも)
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 いづくへまた返しやるべきならねば、とどめぬ。 いづくへまた返しやるべきならねば、とどめぬ。
  
-三日、法皇の御幸、この御所へなるに、この衣(きぬ)を着たれば、大納言、「なべてならず、色も匂ひも見ゆるは。御所より賜はりたるか」と言ふも、胸騒がしく思えながら、「常磐井(ときはい)の准后(じゆごう)((西園寺実氏室、貞子))より」とぞ、つれなくいらへ侍りし。+三日、法皇((後嵯峨法皇))の御幸、この御所へなるに、この衣(きぬ)を着たれば、大納言、「なべてならず、色も匂ひも見ゆるは。御所より賜はりたるか」と言ふも、胸騒がしく思えながら、「常磐井(ときはい)の准后(じゆごう)((西園寺実氏室、貞子))より」とぞ、つれなくいらへ侍りし。
  
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   ならす色もにほひもみゆるは御所より給はりたるかといふもむ   ならす色もにほひもみゆるは御所より給はりたるかといふもむ
   ねさはかしくおほえなからときはいのしゆこうよりとそ   ねさはかしくおほえなからときはいのしゆこうよりとそ
-  つれなくいらへ侍し十五日の夕つかたかはさきよりむかへに+  つれなくいらへ侍し十五日の夕つかたかはさきよりむかへに/s7r k1-4
  
 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/7 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/7
text/towazu/towazu1-01.1551947270.txt.gz · 最終更新: 2019/03/07 17:27 by Satoshi Nakagawa