text:senjusho:m_senjusho09-08
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:senjusho:m_senjusho09-08 [2016/10/22 21:45] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:senjusho:m_senjusho09-08 [2019/01/06 23:44] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 6: | 行 6: | ||
過ぎぬる長月二十日あまりのころ、江口といふ所を過ぎ侍りしに、家は南北の河岸にさしはさみ、心は旅人の行き来(き)の船を思ふ遊女のありさま、「いとあはれに、はかなきものかな」と見立てりし((「見立てりし」は底本「見てりし」。諸本により補う。))ほどに、冬を待ちえぬむら時雨の、冴え((「冴え」は底本「さて」。諸本「さへ」にしたがい訂正。))暮らし侍りしかば((「侍りしかば」は底本「ましかば」。諸本により訂正。))、けしかる賤(しづ)が伏せ屋に立ちより、晴れ間待つ間(ま)の宿(やど)を借り侍りしに、主(あるじ)の遊女、ゆる気色の見え((「見え」は底本「見て」。諸本により訂正。))侍らざりしかば、何となく、 | 過ぎぬる長月二十日あまりのころ、江口といふ所を過ぎ侍りしに、家は南北の河岸にさしはさみ、心は旅人の行き来(き)の船を思ふ遊女のありさま、「いとあはれに、はかなきものかな」と見立てりし((「見立てりし」は底本「見てりし」。諸本により補う。))ほどに、冬を待ちえぬむら時雨の、冴え((「冴え」は底本「さて」。諸本「さへ」にしたがい訂正。))暮らし侍りしかば((「侍りしかば」は底本「ましかば」。諸本により訂正。))、けしかる賤(しづ)が伏せ屋に立ちより、晴れ間待つ間(ま)の宿(やど)を借り侍りしに、主(あるじ)の遊女、ゆる気色の見え((「見え」は底本「見て」。諸本により訂正。))侍らざりしかば、何となく、 | ||
- | 世の中を厭ふまでこそかたからめ仮の宿りを惜しむ君かな | + | 世の中をいとふまでこそかたからめ仮の宿りを惜しむ君かな |
と詠みて侍りしかば、主の遊女、うち笑ひて、 | と詠みて侍りしかば、主の遊女、うち笑ひて、 | ||
家を出づる((底本「世をいとふイ」と異本注記))人とし聞けば仮の宿に心とむなと思ふばかりぞ | 家を出づる((底本「世をいとふイ」と異本注記))人とし聞けば仮の宿に心とむなと思ふばかりぞ | ||
+ | |||
と返して、急ぎ内に入れ侍りき。 | と返して、急ぎ内に入れ侍りき。 | ||
text/senjusho/m_senjusho09-08.txt · 最終更新: 2019/01/06 23:44 by Satoshi Nakagawa