ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:senjusho:m_senjusho08-09

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

text:senjusho:m_senjusho08-09 [2016/09/06 14:17] – 作成 Satoshi Nakagawatext:senjusho:m_senjusho08-09 [2016/09/06 14:19] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
行 6: 行 6:
 昔、橘直幹といふ文章博士、無実を蒙りて、「流さるべし」とて、「明日なん宣下くだる」と聞こえけるに、力なし。 昔、橘直幹といふ文章博士、無実を蒙りて、「流さるべし」とて、「明日なん宣下くだる」と聞こえけるに、力なし。
  
-「先世の宿執にこそ」と思ひ侍れど、年ごろ、いとほしく侍りし妻子も別れがたく、住み慣れし都をふり捨てて、旅立たんことの去りがたく思えて、「北野((北野天満宮。菅原道真を祀る。))こそ、かやうのことには、あらたなることどもおはしまし侍るなれ」とて、その夜、参りりて、泣く泣く終夜(よもすがら)祈念し侍りける暁方に、御殿内に、大きに気高き御声にて、「道風((小野道風))、道風」と呼ばせ給ふに、道風の声にて、答(いら)へ申しけり。さて、仰せらるる。「この直幹、歎き申すこと、無実にて侍れば、御免除あるべき状書きて、直幹に賜ぶべし」といふ御声あり。+「先世の宿執にこそ」と思ひ侍れど、年ごろ、いとほしく侍りし妻子も別れがたく、住み慣れし都をふり捨てて、旅立たんことの去りがたく思えて、「北野((北野天満宮。菅原道真を祀る。))こそ、かやうのことには、あらたなることどもおはしまし侍るなれ」とて、その夜、参りこもりて、泣く泣く終夜(よもすがら)祈念し侍りける暁方に、御殿内に、大きに気高き御声にて、「道風((小野道風))、道風」と呼ばせ給ふに、道風の声にて、答(いら)へ申しけり。さて、仰せらるる。「この直幹、歎き申すこと、無実にて侍れば、御免除あるべき状書きて、直幹に賜ぶべし」といふ御声あり。
  
 うけたまはるに、身の毛、いよ立ちて、かたじけなく思えて、泣き居たるに、やや((「やや」は底本「やく」。諸本により訂正))しばしありて、たてぶめる文を、御簾の内より、さつと投げ出だされたり。 うけたまはるに、身の毛、いよ立ちて、かたじけなく思えて、泣き居たるに、やや((「やや」は底本「やく」。諸本により訂正))しばしありて、たてぶめる文を、御簾の内より、さつと投げ出だされたり。
text/senjusho/m_senjusho08-09.1473139074.txt.gz · 最終更新: 2016/09/06 14:17 by Satoshi Nakagawa