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text:senjusho:m_senjusho01-04 [2016/05/04 18:41] – 作成 Satoshi Nakagawatext:senjusho:m_senjusho01-04 [2016/05/04 18:41] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 七条の皇后((藤原温子))、失せさせ給ひしかば、人々、ちりぢりになり行きて、宮のうち荒れはてて、ものさびしきありさまにて侍りけるに、さまをかへ、袂を染め給ふ方も、いまそかりけるなんめり。その中に、かの御所にさぶらひける、伊勢といふ女房のもとへ、人のとぶらひ聞こえ侍りける返事に、 七条の皇后((藤原温子))、失せさせ給ひしかば、人々、ちりぢりになり行きて、宮のうち荒れはてて、ものさびしきありさまにて侍りけるに、さまをかへ、袂を染め給ふ方も、いまそかりけるなんめり。その中に、かの御所にさぶらひける、伊勢といふ女房のもとへ、人のとぶらひ聞こえ侍りける返事に、
  
->>おきつ波 荒れのみまさる 京のうちは 年経て住みし 伊勢の海士(あま)も 船流したる 心地して 寄らむ方なく かなしきに 涙の色の くれなゐは われらが中の しぐれにて 秋のもみぢと 人々は をのがちりぢり 別れなば 頼む影なく なり果てて とまるものとは 花すすき 君なき庭に むれ立ちて 空をまねかば 初雁の 鳴き渡りつつ よそにこそ見め+>おきつ波 荒れのみまさる 京のうちは 年経て住みし 伊勢の海士(あま)も 船流したる 心地して 寄らむ方なく かなしきに 涙の色の くれなゐは われらが中の しぐれにて 秋のもみぢと 人々は をのがちりぢり 別れなば 頼む影なく なり果てて とまるものとは 花すすき 君なき庭に むれ立ちて 空をまねかば 初雁の 鳴き渡りつつ よそにこそ見め
  
 と読み侍りけるを、宮のうちの人々、これを聞き給ひて、ことにあはれみ思はれけるにや。さらなり、さこそ悲しくもおはしあひ給けめな。たのみをかけ奉る皇后に、おくれ奉りて、日数もいまだ重ねず、袂(たもと)もさりと濡るるころ、あはれにはかなきことを聞き給ひけん、心のうちどもは、さこそ侍りけん。 と読み侍りけるを、宮のうちの人々、これを聞き給ひて、ことにあはれみ思はれけるにや。さらなり、さこそ悲しくもおはしあひ給けめな。たのみをかけ奉る皇后に、おくれ奉りて、日数もいまだ重ねず、袂(たもと)もさりと濡るるころ、あはれにはかなきことを聞き給ひけん、心のうちどもは、さこそ侍りけん。
text/senjusho/m_senjusho01-04.txt · 最終更新: 2016/05/04 18:42 by Satoshi Nakagawa