text:senjusho:m_senjusho01-02
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン | |||
text:senjusho:m_senjusho01-02 [2016/05/02 02:46] – Satoshi Nakagawa | text:senjusho:m_senjusho01-02 [2016/05/03 18:55] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
撰集抄 | 撰集抄 | ||
- | ====== 巻1第2話(2) 祇園示現(御歌) ====== | + | ====== 巻1第2話(2) 祇園示現(御歌) ====== |
===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
- | すぎにしころ、九重の外、白河のほとりに、形ばかりなる庵(いほり)むすびて、深く後世のいとなみする人侍り。 | + | 過ぎにしころ、九重の外、白河のほとりに、形ばかりなる庵(いほり)むすびて、深く後世のいとなみする人侍り。 |
この人、親の処分をゆゑなく人に押し取られて、せむかたなく侍りけるままに、祇園に七日こもりて、「ことはり給へ」と祈り申し侍りけるに、七日と申すに、暁、御殿の御戸を開かれて、「やや」と仰せられければ、「大明神の御託宣にこそ」と思ひて、急ぎ起きなほり、かしこまりて侍るに、気高き御声して、 | この人、親の処分をゆゑなく人に押し取られて、せむかたなく侍りけるままに、祇園に七日こもりて、「ことはり給へ」と祈り申し侍りけるに、七日と申すに、暁、御殿の御戸を開かれて、「やや」と仰せられければ、「大明神の御託宣にこそ」と思ひて、急ぎ起きなほり、かしこまりて侍るに、気高き御声して、 | ||
行 30: | 行 30: | ||
わがごときの者の、今の示現を蒙り侍りたらんには、「まづ申す所をばかなへ給はで、あはれ道心の歌、何とも思えず」と、神をそしり申すとも、よもこの世をば振り捨てじと、いとど口惜く侍り。 | わがごときの者の、今の示現を蒙り侍りたらんには、「まづ申す所をばかなへ給はで、あはれ道心の歌、何とも思えず」と、神をそしり申すとも、よもこの世をば振り捨てじと、いとど口惜く侍り。 | ||
- | さやうの敵などの出家遁世せんは、いとど嬉しくて、ますます財宝にこそつながるべきに、「あさまし」と思ひて、一つ庵に行きて、後世のつとをたくはへ給はんこと、筆にも述べがたく侍り。 | + | また押し取りけん人の発心は、なほたけ高く貴く侍り。さやうの敵などの出家遁世せんは、いとど嬉しくて、ますます財宝にこそつながるべきに、「あさまし」と思ひて、一つ庵に行きて、後世のつとをたくはへ給はんこと、筆にも述べがたく侍り。 |
印度・唐土(もろこし)・我朝に、つらつら昔のあとをとぶらふに、憂きことにあひて、逃るるたぐひは多く侍れども、いまだ聞かず、喜びありて世を捨つとは。されば往生の素懐をとげ給ふも理(ことはり)なり。 | 印度・唐土(もろこし)・我朝に、つらつら昔のあとをとぶらふに、憂きことにあひて、逃るるたぐひは多く侍れども、いまだ聞かず、喜びありて世を捨つとは。されば往生の素懐をとげ給ふも理(ことはり)なり。 | ||
行 96: | 行 96: | ||
には先申所をはかなへ給はてあはれ道心の哥何とも | には先申所をはかなへ給はてあはれ道心の哥何とも | ||
おほえすと神をそしり申ともよも此世をは振捨しといとと | おほえすと神をそしり申ともよも此世をは振捨しといとと | ||
- | 口惜く侍りさ様の敵なとの出家遁世せんはいととうれしく | + | 口惜く侍り又押取けん人の発心はなをたけ高く貴 |
+ | | ||
てますます財宝にこそつなかるへきに浅増と思ひて | てますます財宝にこそつなかるへきに浅増と思ひて | ||
一いほりに行て後世のつとをたくはへ給はん事 | 一いほりに行て後世のつとをたくはへ給はん事 |
text/senjusho/m_senjusho01-02.1462124815.txt.gz · 最終更新: 2016/05/02 02:46 by Satoshi Nakagawa