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text:kohon:kohon009 [2014/05/09 19:03] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:kohon:kohon009 [2014/07/29 04:36] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
  
-今は昔、紫式部、上東門院に歌読み優の者にてさぶらふに、大斎院より、春つ方、「つれづれにさぶらふに、さりぬべき物語や候ふ」とたづね申させ給ひければ、御草子どもとり出ださせ給ひて、「いづれをか参らすべき」など、選り出ださせ給ふに、紫式部、「みな目慣れてさぶらふに、新しく作りて参らせさせ給ひつかし」と申しければ、「さらば、作れかし」とおほせられければ、源氏は作りて参らせたりけるとぞ。+今は昔、紫式部、上東門院に歌読み優の者にて候(さぶらふに、大斎院より、春つ方、「つれづれにふに、さりぬべき物語や候ふ」とね申させ給ひければ、御草子どもとり出ださせ給ひて、「いづれをか参らすべき」など、選り出ださせ給ふに、紫式部、「みな目慣れてふに、新しく作りて参らせさせ給ひつかし」と申しければ、「さらば、作れかし」とせられければ、源氏は作りて参らせたりけるとぞ。
  
-いよいよ心ばせすぐれて、めでたきものにてさぶらふほどに、伊勢大輔参りぬ。それも歌詠みの筋なれば、殿、いみじうもてなされ給ふ。奈良より年に一度、八重桜を折りて持て参るを、紫式部、「今年は大輔に譲り候らはむ」とて、譲りければ、取り次ぎて参らするに殿「遅し、遅し」と仰せらるる御声につきて、+いよいよ心ばせすぐれて、めでたきものにてふほどに、伊勢大輔参りぬ。それも歌詠みの筋なれば、殿、いみじうもてなされ給ふ。奈良より年に一度、八重桜を折りて持て参るを、紫式部、「今年は大輔に譲り候らはむ」とて、譲りければ、取り次ぎて参らするに殿「遅し、遅し」と仰せらるる御声につきて、
  
   いにしへの奈良の宮この八重桜今日九重に匂ひぬるかな   いにしへの奈良の宮この八重桜今日九重に匂ひぬるかな
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 「取り次ぎつるほどほどもなかりつるに、いつの間に思ひ続けけむ」と、人も思ふ、殿もおぼしめしたり。 「取り次ぎつるほどほどもなかりつるに、いつの間に思ひ続けけむ」と、人も思ふ、殿もおぼしめしたり。
  
-めでたくてさぶらふほどに、致仕(ちじ)の中納言の子の、越前の守とて、いみじうやさしかりける人の妻になりにけり。+めでたくてふほどに、致仕(ちじ)の中納言の子の、越前の守とて、いみじうやさしかりける人の妻になりにけり。
  
-会ひ始めたりけるころ、石山にこもりて音せざりければ、遣はしける、+会ひ始めたりけるころ、石山にこもりて音せざりければ、遣はしける、
  
   みるめこそあふみの海にかたからめ吹きだに通へ滋賀の浦風   みるめこそあふみの海にかたからめ吹きだに通へ滋賀の浦風
text/kohon/kohon009.txt · 最終更新: 2021/10/07 21:17 by Satoshi Nakagawa