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text:kohon:kohon008 [2014/07/28 14:19] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:kohon:kohon008 [2016/01/20 15:52] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 +古本説話集
 ====== 第8話 御荒の宣旨、歌の事 ====== ====== 第8話 御荒の宣旨、歌の事 ======
  
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 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
  
-今は昔、御荒(みあれ)の宣旨といふ人は、優にやさしく、かたちもめでたかりけり。皇太后宮の女房なり。中納言定頼、文おこせ給ふ。+今は昔、御荒(みあれ)の宣旨といふ人は、優にやさしく、かたちもめでたかりけり。皇太后宮((藤原妍子))の女房なり。中納言定頼((藤原定頼))、文おこせ給ふ。
  
   昼は蝉夜は蛍に身をなして鳴き暮らしては燃えや明かさん   昼は蝉夜は蛍に身をなして鳴き暮らしては燃えや明かさん
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 はるばると野中に見ゆる忘れ水絶え間絶え間を嘆くころかな はるばると野中に見ゆる忘れ水絶え間絶え間を嘆くころかな
  
-中納言、見目よりはじめ、何事にも優れてめでたくおはするを、心ある人は見知りて、なげかし秋の夕暮れ、きりぎりすいたく鳴きけるを、「長き思ひは」など、ながめ給ひけるを、忘れがたき事に言ひためり。絶え給て後、賀茂に参り給ふと聞きて、「今一度も見む」と思ひて、心にもあらぬ賀茂参りして、+中納言、見目よりはじめ、何事にも優れてめでたくおはするを、心ある人は見知りて、かし秋の夕暮れ、きりぎりすいたく鳴きけるを、「長き思ひは」など、ながめ給ひけるを、忘れがたき事に言ひためり。 
 + 
 +絶え給て後、賀茂に参り給ふと聞きて、「今一度も見む」と思ひて、心にもあらぬ賀茂参りして、
  
   よそにても見るに心はなぐさまで立ちこそまされ賀茂の川波   よそにても見るに心はなぐさまで立ちこそまされ賀茂の川波
  
-とても、涙のみいとどこぼれまさりて、大方うつし心もなくぞおぼえける。+とても、涙のみいとどこぼれまさりて、大方うつし心もなくぞえける。
  
 蝉の鳴くを聞きて、 蝉の鳴くを聞きて、
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 ただ中納言をのみ恋ひ嘆きて、「いかに罪深かりけむ」と思ふに、貴くめでたき法師子を持ちて、山に置かれたりけるぞ、「罪少し軽るみにけむかし」とはおぼゆれ。 ただ中納言をのみ恋ひ嘆きて、「いかに罪深かりけむ」と思ふに、貴くめでたき法師子を持ちて、山に置かれたりけるぞ、「罪少し軽るみにけむかし」とはおぼゆれ。
  
->御堂の中姫君、三条院の御時の后、皇太后宮と申したるが女房。大和の宣旨とも申しけり。世にいみじき色好みは本院の侍従・御荒の宣旨と申たる。侍従は、はるか昔の平が世の人。この御の宣旨は中ごろの人。されば、昔今の人を一手に具して申したる。((「御堂の中姫君」以下、底本二字下げ。注記の扱い。))+>御堂の中姫君((藤原妍子))、三条院の御時の后、皇太后宮と申したるが女房なり。大和の宣旨とも申しけり。世にいみじき色好みは本院の侍従・御荒の宣旨と申たる。侍従は、はるか昔の平中((平貞文))が世の人。この御の宣旨は中ごろの人。されば、昔今の人を一手に具して申したるなり。((「御堂の中姫君」以下、底本二字下げ。注記の扱い。))
 ===== 翻刻 ===== ===== 翻刻 =====
  
text/kohon/kohon008.1406524797.txt.gz · 最終更新: 2014/07/28 14:19 by Satoshi Nakagawa