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text:kohon:kohon006 [2016/01/20 15:29] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:kohon:kohon006 [2021/10/07 02:00] (現在) Satoshi Nakagawa
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 持て参りて、参らせたりければ、「まことに久しくなりにけり」と心苦しくて、やがておはしましけり。 持て参りて、参らせたりければ、「まことに久しくなりにけり」と心苦しくて、やがておはしましけり。
  
-女も月をながめて、端にゐたりけり。前栽の露きらきらと置きたるに、「人は草葉の露なれや」と、のたまはするさま、優にめでたし。御扇に御文を入れて、「御使の取らで参りにければ」とて、給はす。扇を指し出だして取りつ。「今宵は帰りなん。明日物忌みといふなりつれば、らむもあやしかるべければ」とのたまはすれば、+女も月をながめて、端にゐたりけり。前栽の露きらきらと置きたるに、「人は草葉の露なれや」と、のたまはするさま、優にめでたし。御扇に御文を入れて、「御使の取らで参りにければ」とて、給はす。扇を指し出だして取りつ。「今宵は帰りなん。明日物忌みといふなりつれば、なからむもあやしかるべければ」とのたまはすれば、
  
   心みに雨も降らなん宿過ぎて空行く月の影や止まると   心みに雨も降らなん宿過ぎて空行く月の影や止まると
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 始めつ方は、かやうに心ざしもなき様に見えたれど、後には上を去りたてまつらせ給ひて、ひたぶるにこの式部を妻(め)にせさせ給ひたりと見えたり。 始めつ方は、かやうに心ざしもなき様に見えたれど、後には上を去りたてまつらせ給ひて、ひたぶるにこの式部を妻(め)にせさせ給ひたりと見えたり。
  
-保昌((藤原保昌))に具して、丹後へ下りたるに、「明日狩りせむ」とて、者ども集ひたる夜さり、鹿のいたく鳴きたれば、「いで、あはれや。明日死なむずれば、いたく鳴くにこそ」と、心憂がりければ、「さおぼさば、狩とどめむ。よからむ歌を詠み給へ」と言はれて+保昌((藤原保昌))に具して、丹後へ下りたるに、「明日狩りせむ」とて、者ども集ひたる夜さり、鹿のいたく鳴きたれば、「いで、あはれや。明日死なむずれば、いたく鳴くにこそ」と、心憂がりければ、「さおぼさば、狩とどめむ。よからむ歌を詠み給へ」と言はれて
  
   ことはりやいかでか鹿の鳴かざらん今宵ばかりの命と思へば   ことはりやいかでか鹿の鳴かざらん今宵ばかりの命と思へば
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   をめにせさせ給たりとみえたりやすまさに   をめにせさせ給たりとみえたりやすまさに
   くして丹後へくたりたるにあすかりせむとて   くして丹後へくたりたるにあすかりせむとて
-  ものともつとひたる夜さりしかのいたくなき+  ものともつとひたる夜さりしかのいたくなき
   たれはいてあはれやあすしなむすれはいたくな/b40 e20   たれはいてあはれやあすしなむすれはいたくな/b40 e20
  
text/kohon/kohon006.1453271357.txt.gz · 最終更新: 2016/01/20 15:29 by Satoshi Nakagawa