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text:kohon:kohon006 [2014/09/15 21:39] – [第6話 帥宮、和泉式部に通ひ給ふ事] Satoshi Nakagawatext:kohon:kohon006 [2021/10/07 02:00] (現在) Satoshi Nakagawa
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 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
  
-今は昔、和泉式部がもとに、帥宮(そちのみや)通はせ給ひけるころ、久しく音せさせ給はざりけるに、その宮に候ふ童(わらは)の来たりけるに、御文もなし。帰り参るに、+今は昔、和泉式部がもとに、帥宮(そちのみや)((敦道親王))通はせ給ひけるころ、久しく音せさせ給はざりけるに、その宮に候ふ童(わらは)の来たりけるに、御文もなし。帰り参るに、
  
   待たましもかばかりこそはあらましか思ひもかけぬ今日の夕暮れ   待たましもかばかりこそはあらましか思ひもかけぬ今日の夕暮れ
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 持て参りて、参らせたりければ、「まことに久しくなりにけり」と心苦しくて、やがておはしましけり。 持て参りて、参らせたりければ、「まことに久しくなりにけり」と心苦しくて、やがておはしましけり。
  
-女も月をながめて、端にゐたりけり。前栽の露きらきらと置きたるに、「人は草葉の露なれや」と、のたまはするさま、優にめでたし。御扇に御文を入れて、「御使の取らで参りにければ」とて、給はす。扇を指し出だして取りつ。「今宵は帰りなん。明日物忌みといふなりつれば、らむもあやしかるべければ」とのたまはすれば、+女も月をながめて、端にゐたりけり。前栽の露きらきらと置きたるに、「人は草葉の露なれや」と、のたまはするさま、優にめでたし。御扇に御文を入れて、「御使の取らで参りにければ」とて、給はす。扇を指し出だして取りつ。「今宵は帰りなん。明日物忌みといふなりつれば、なからむもあやしかるべければ」とのたまはすれば、
  
   心みに雨も降らなん宿過ぎて空行く月の影や止まると   心みに雨も降らなん宿過ぎて空行く月の影や止まると
行 26: 行 26:
   我ゆゑに月を眺むと告げつればまことかと見に出でて来にけり   我ゆゑに月を眺むと告げつればまことかと見に出でて来にけり
  
-「何事につけても、をかしうおはしますに、あはあはしき物に思はれ参らせたる、心憂くおぼゆ」と日記に書きたり。+「何事につけても、をかしうおはしますに、あはあはしき物に思はれ参らせたる、心憂くゆ」と日記に書きたり。
  
 始めつ方は、かやうに心ざしもなき様に見えたれど、後には上を去りたてまつらせ給ひて、ひたぶるにこの式部を妻(め)にせさせ給ひたりと見えたり。 始めつ方は、かやうに心ざしもなき様に見えたれど、後には上を去りたてまつらせ給ひて、ひたぶるにこの式部を妻(め)にせさせ給ひたりと見えたり。
  
-保昌に具して、丹後へ下りたるに、「明日狩りせむ」とて、者ども集ひたる夜さり、鹿のいたく鳴きたれば、「いで、あはれや。明日死なむずれば、いたく鳴くにこそ」と、心憂がりければ、「さおぼさば、狩とどめむ。よからむ歌を詠み給へ」と言はれて+保昌((藤原保昌))に具して、丹後へ下りたるに、「明日狩りせむ」とて、者ども集ひたる夜さり、鹿のいたく鳴きたれば、「いで、あはれや。明日死なむずれば、いたく鳴くにこそ」と、心憂がりければ、「さおぼさば、狩とどめむ。よからむ歌を詠み給へ」と言はれて
  
   ことはりやいかでか鹿の鳴かざらん今宵ばかりの命と思へば   ことはりやいかでか鹿の鳴かざらん今宵ばかりの命と思へば
  
-さて、その日の狩はとどめてけり。+さて、その日の狩はとどめてけり。
  
 保昌に忘られて侍りけるころ、貴船に参りて御手洗(みたらし)河に蛍の飛びけるを見て 保昌に忘られて侍りけるころ、貴船に参りて御手洗(みたらし)河に蛍の飛びけるを見て
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   をめにせさせ給たりとみえたりやすまさに   をめにせさせ給たりとみえたりやすまさに
   くして丹後へくたりたるにあすかりせむとて   くして丹後へくたりたるにあすかりせむとて
-  ものともつとひたる夜さりしかのいたくなき+  ものともつとひたる夜さりしかのいたくなき
   たれはいてあはれやあすしなむすれはいたくな/b40 e20   たれはいてあはれやあすしなむすれはいたくな/b40 e20
  
text/kohon/kohon006.1410784782.txt.gz · 最終更新: 2014/09/15 21:39 by Satoshi Nakagawa