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text:kohon:kohon005 [2014/05/08 14:20] – 作成 Satoshi Nakagawatext:kohon:kohon005 [2016/01/20 14:31] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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-====== 第5話 赤染衛門の事の事 ======+古本説話集 
 +====== 第5話 赤染衛門の事 ======
  
 **赤染衛門事** **赤染衛門事**
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 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
  
 +今は昔、赤染衛門といふ歌詠みは、時望((赤染時用))といひけるが女(むすめ)、入道殿((藤原道長))に候ひけるが、心ならず匡衡((大江匡衡))を男にして、いと若き博士にてありけるを、事にふれて、のがひ、厭ひ、あらじとしけれど、男はあやにくに心ざし深くなりゆく。殿の御供に住吉へ参りて詠みて起こせたる。
 +
 +  恋しきに難波の事もおぼほえず誰住吉のまつといひけん
 +
 +返事
 +
 +  名を聞くに長居しぬべき住吉のまつとはまさる人やいひけむ
 +
 +会ふ事の有難かりければ、思ひわびて稲荷の神主のもとへ通ひなどしけれど、心にも入らざりけり。「すぎむらならば」など詠みたるは、そのをりの事なるべし。
 +
 +匡衡、尾張の守などになりにければ、猛(まう)になりて、え厭ひも果てず、挙周(たかちか)((大江挙周))なと産みてければ、幸い人といはれけり。
 +
 +尾張へ具して下る道にて、守一人ごつ。
 +
 +  十日の国に至りてしがな
 +
 +赤染、
 +
 +  宮こ出でて今日九日になりにけり
 +
 +挙周、望む事有けるに。申文の奥に書きて、鷹司殿((藤原道長室源倫子))へ参らせたる
 +
 +  思へ君頭の雪を払ひつつ消えぬ先にと急ぐ心を
 +
 +入道殿((藤原道長))、御覧じて、いみしくあはれがらせ給ひて、和泉には急ぎなさせ給たりけるとぞ。
 +
 +和泉へ下る道にて、挙周、例ならず大事にて、限りになりたりければ、
 +
 +  替はらむと思ふ命は惜しからでさても別れむ程ぞ悲しき
 +
 +  頼みては久しく成りぬ住吉のまつこのたびのしるし見せなむ
 +
 +と書きて、住吉に参らせたりけるままに、挙周、心地さはさはと止みにけり。その後、めでたき事に、世に言ひののしりけり。
 ===== 翻刻 ===== ===== 翻刻 =====
  
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   いつみにはいそきなさせ給たりけるとそいつ   いつみにはいそきなさせ給たりけるとそいつ
   みへくたるみちにてたかちかれいならす大事にて   みへくたるみちにてたかちかれいならす大事にて
-  かきりかりなりたりけれは+  かきりなりたりけれは
     かはらむとおもふいのちはをしからて/b36 e18     かはらむとおもふいのちはをしからて/b36 e18
  
text/kohon/kohon005.1399526425.txt.gz · 最終更新: 2014/05/08 14:20 by Satoshi Nakagawa