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text:k_konjaku:k_konjaku31-29 [2015/04/28 16:01] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku31-29 [2019/03/21 19:12] (現在) – [巻31第29話 蔵人式部丞貞高於殿上俄死語 第廿九] Satoshi Nakagawa
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 今昔、円融院の天皇の御時に、内裏焼にければ、□院になむ御ける。 今昔、円融院の天皇の御時に、内裏焼にければ、□院になむ御ける。
  
-而る間、殿上の夕さりの大盤に、殿上人・蔵人数(あまた)着て、物食ける間に、式部丞の蔵人藤原の貞高と云ける人も着たりけるに、其の貞高が俄に低(うつぶ)して、大盤に顔を宛て、喉をくつめかす様に鳴して有ければ、極て見苦かりけるを、小野の宮の実資の右の大臣、其の時に頭の中将にて御けるが、其れも大盤に着て御ければ、主殿司を呼て、「其の式部丞が居様こそ極く心得ね。其れ、寄て捜れ」と宣ければ、主殿司、寄て捜て、「早う死給ひにたり。極き態かな。此は何が為べき」と云けるを聞て、大盤に着たる有と有る殿上人・蔵人、皆立走て向たる方に走り散にけり。+而る間、殿上の夕さりの大盤に、殿上人・蔵人数(あまた)着て、物食ける間に、式部丞の蔵人藤原の貞高と云ける人も着たりけるに、其の貞高((藤原貞孝))が俄に低(うつぶ)して、大盤に顔を宛て、喉をくつめかす様に鳴して有ければ、極て見苦かりけるを、小野の宮の実資の右の大臣、其の時に頭の中将にて御けるが、其れも大盤に着て御ければ、主殿司を呼て、「其の式部丞が居様こそ極く心得ね。其れ、寄て捜れ」と宣ければ、主殿司、寄て捜て、「早う死給ひにたり。極き態かな。此は何が為べき」と云けるを聞て、大盤に着たる有と有る殿上人・蔵人、皆立走て向たる方に走り散にけり。
  
 頭の中将は「然りとて、此く有るべき事にも非ず」と云て、「此れを奏司の下部召して掻出よ」と仰せられければ、「何方の陣よりか将出すべき」と申ければ、頭の中将、「東の陣より出すべきぞ」と行はれけるを聞て、蔵人所の衆・滝口・出納・御蔵女官・主殿司・下部共に至まで、「東の陣より出さむを見む」とて、競ひ集たる程に、頭の中将、違へて俄に、「西の陣より将出よ」と有ければ、殿上の畳乍ら西の陣より掻出て将行ぬれば、見むとしつる若干の者共は、否見ず成ぬ。 頭の中将は「然りとて、此く有るべき事にも非ず」と云て、「此れを奏司の下部召して掻出よ」と仰せられければ、「何方の陣よりか将出すべき」と申ければ、頭の中将、「東の陣より出すべきぞ」と行はれけるを聞て、蔵人所の衆・滝口・出納・御蔵女官・主殿司・下部共に至まで、「東の陣より出さむを見む」とて、競ひ集たる程に、頭の中将、違へて俄に、「西の陣より将出よ」と有ければ、殿上の畳乍ら西の陣より掻出て将行ぬれば、見むとしつる若干の者共は、否見ず成ぬ。
text/k_konjaku/k_konjaku31-29.1430204494.txt.gz · 最終更新: 2015/04/28 16:01 by Satoshi Nakagawa