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text:k_konjaku:k_konjaku31-20 [2015/04/24 02:19] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku31-20 [2015/04/24 02:19] (現在) Satoshi Nakagawa
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 而る間、□□天皇、御目を病せ給ひければ、彼の霊巌寺に行幸有るべき議有けるに、この巌廉の有れば、御輿の通るべき様無かりければ、「行幸否(え)有まじかなり」と定められけるを聞き、其の寺の別当也ける僧、「行幸有らば、我れ必ず僧綱に成べきに、行幸無くば僧綱に成ぬ事は不用ななり」と思て、行幸を有らせむが故に、「此の巌廉失はむ」と云て、夫(ぶ)を以って多くの柴を苅せて、此の巌廉の上下に積せて、火を付て焼むと為るに、其の寺の僧の中に年老たる者共など有て、「此の寺の験じ給ふ事は、此の巌廉に依て也。其れに、此の巌廉を失はれなば、験失せて寺廃(すたれ)なむとす」と云ひ合て、歎きけれども、時の別当、我が喜せむが為に、破(わり)無く謀る事なれば、寺の僧共の云はむ事をば聞てむやは。耳にも聞入れずして、其の苅積たる柴に火を付て焼きつ。 而る間、□□天皇、御目を病せ給ひければ、彼の霊巌寺に行幸有るべき議有けるに、この巌廉の有れば、御輿の通るべき様無かりければ、「行幸否(え)有まじかなり」と定められけるを聞き、其の寺の別当也ける僧、「行幸有らば、我れ必ず僧綱に成べきに、行幸無くば僧綱に成ぬ事は不用ななり」と思て、行幸を有らせむが故に、「此の巌廉失はむ」と云て、夫(ぶ)を以って多くの柴を苅せて、此の巌廉の上下に積せて、火を付て焼むと為るに、其の寺の僧の中に年老たる者共など有て、「此の寺の験じ給ふ事は、此の巌廉に依て也。其れに、此の巌廉を失はれなば、験失せて寺廃(すたれ)なむとす」と云ひ合て、歎きけれども、時の別当、我が喜せむが為に、破(わり)無く謀る事なれば、寺の僧共の云はむ事をば聞てむやは。耳にも聞入れずして、其の苅積たる柴に火を付て焼きつ。
  
-然て、巌を温(あたたまら)かして、大きなる鉄槌(かなづち)を以て打砕ければ、皆砕て散々(ちりちる)に、其の時に巌廉の砕ける中より、百人許が音にて、同音に咲たりければ、寺の僧共、「極き態かな。此の寺は荒ぬ。魔障に謀られて此(かく)しつる也」と云て、別当を悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡)み喤ける程に、巌廉は失なひたれども行幸も無かりければ、別当、喜びも為で止にけり。+然て、巌を温(あたたまら)かして、大きなる鉄槌(かなづち)を以て打砕ければ、皆砕て散々(ちりちる)に、其の時に巌廉の砕ける中より、百人許が音にて、同音に咲たりければ、寺の僧共、「極き態かな。此の寺は荒ぬ。魔障に謀られて此(かく)しつる也」と云て、別当を悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))み喤ける程に、巌廉は失なひたれども行幸も無かりければ、別当、喜びも為で止にけり。
  
 其の後、別当、寺の僧共に悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))み厭はれて、寺にも寄来ず成にけり。其の後より、寺、只荒(ひたあれ)に荒て、堂舎・僧房も皆失にければ、僧、一人も住む事無くして、後には木伐の道と成てなむ有ける。 其の後、別当、寺の僧共に悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))み厭はれて、寺にも寄来ず成にけり。其の後より、寺、只荒(ひたあれ)に荒て、堂舎・僧房も皆失にければ、僧、一人も住む事無くして、後には木伐の道と成てなむ有ける。
text/k_konjaku/k_konjaku31-20.1429809569.txt.gz · 最終更新: 2015/04/24 02:19 by Satoshi Nakagawa