ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:k_konjaku:k_konjaku30-2

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

次のリビジョン
前のリビジョン
text:k_konjaku:k_konjaku30-2 [2015/03/26 19:32] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku30-2 [2017/08/22 17:05] (現在) – 以前のリビジョンを復元 (2015/03/26 19:33) Satoshi Nakagawa
行 12: 行 12:
 此の武蔵は、形・有様微妙き若人にてなむ有ける。然るべき人々、数仮借しけれども、思ひ上りて、男為でぞ有ける。然れども、此の平中、此く強に仮借しければ、女心に思ひ弱りて、遂に忍て会にけり。 此の武蔵は、形・有様微妙き若人にてなむ有ける。然るべき人々、数仮借しけれども、思ひ上りて、男為でぞ有ける。然れども、此の平中、此く強に仮借しければ、女心に思ひ弱りて、遂に忍て会にけり。
  
-其の朝(つとめて)、平中、返けるきに((底本頭注「返リケルキニハ返リケルニノ誤カ))、文も遣(おこ)せざりければ、女、心苦しく思て、人知れず夕さりまで待けれども、来ざりければ、女、其の夜、「踈(う)し」と思ひ明しけるに、亦の日も文も遣せず。亦其の夜も来ず成にければ、其の朝仕ふ者共など、「糸泛々(あだあだ)しく御すと聞渡る人を、吝((底本異体字 「[[𠫤|http://glyphwiki.org/wiki/u20ae4]]」。但し、底本の異体字は上部のメを々に作る。))(たやす)く会奉らせ給て。自らこそ、御暇も障り給はめ、御文をだに奉り給はぬ事」と云へば、女、我が心にも思ける事を、人も此く云へば、「心踈く、恥かし」と思て泣けり。+其の朝(つとめて)、平中、返けるきに((底本頭注「返リケルキニハ返リケルニノ誤カ))、文も遣(おこ)せざりければ、女、心苦しく思て、人知れず夕さりまで待けれども、来ざりければ、女、其の夜、「踈(う)し」と思ひ明しけるに、亦の日も文も遣せず。亦其の夜も来ず成にければ、其の朝仕ふ者共など、「糸泛々(あだあだ)しく御すと聞渡る人を、吝((底本異体字 「[[http://glyphwiki.org/wiki/u20ae4|𠫤]]」。但し、底本の異体字は上部のメを々に作る。))(たやす)く会奉らせ給て。自らこそ、御暇も障り給はめ、御文をだに奉り給はぬ事」と云へば、女、我が心にも思ける事を、人も此く云へば、「心踈く、恥かし」と思て泣けり。
  
 其の夜も、「若や」と思て待けれども、来ざりけり。亦の日も遣せず。此て五六日に成ぬ。然れば、女、泣にのみ泣て、物も食はざりけり。仕ふ者共も思ひ歎て、「此て人に知られで止み給て、然りとて有べき事にも非ず。異有様をも為(せさ)せ給へかし」など云ける程に、女、人にも知らせで、髪を掻切て尼に成にけり。 其の夜も、「若や」と思て待けれども、来ざりけり。亦の日も遣せず。此て五六日に成ぬ。然れば、女、泣にのみ泣て、物も食はざりけり。仕ふ者共も思ひ歎て、「此て人に知られで止み給て、然りとて有べき事にも非ず。異有様をも為(せさ)せ給へかし」など云ける程に、女、人にも知らせで、髪を掻切て尼に成にけり。
text/k_konjaku/k_konjaku30-2.1427365954.txt.gz · 最終更新: 2015/03/26 19:32 by Satoshi Nakagawa