text:k_konjaku:k_konjaku30-2
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text:k_konjaku:k_konjaku30-2 [2015/03/26 19:32] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku30-2 [2017/08/22 17:02] – [巻30第2話 会平定文女出家語 第二] Satoshi Nakagawa | ||
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行 6: | 行 6: | ||
其の時に、后の宮の女房達、其の日□に出たりけるに、平中、此れを見て、色好み懸りて仮借(けそう)しけるに、返て後に、平中、消息を遣たりければ、女房達、「車也し人は数(あまた)有しを、誰が御許に有る消息にか」と云せたりければ、平中、此なむ書て遣たりける。 | 其の時に、后の宮の女房達、其の日□に出たりけるに、平中、此れを見て、色好み懸りて仮借(けそう)しけるに、返て後に、平中、消息を遣たりければ、女房達、「車也し人は数(あまた)有しを、誰が御許に有る消息にか」と云せたりければ、平中、此なむ書て遣たりける。 | ||
- | ももしきのたもとのかずはみしかどもなかにおもひ□□□□□□□□((欠字部分は『大和物語』「の色ぞ恋ひしき」、『続後撰集』「の色ぞゆかしき」)) | + | ももしきの袂(たもとの)数は見しかどもなかにおもひ□□□□□□□□((欠字部分は『大和物語』「の色ぞ恋ひしき」、『続後撰集』「の色ぞゆかしき」)) |
此れは、武蔵守□□の□□と云ふ人の娘にてなむ有ける。其の人なむ、色濃き練を着たる。其れを仮借する也けり。然れば、其の武蔵なむ、この返事はして云通しける。 | 此れは、武蔵守□□の□□と云ふ人の娘にてなむ有ける。其の人なむ、色濃き練を着たる。其れを仮借する也けり。然れば、其の武蔵なむ、この返事はして云通しける。 | ||
行 12: | 行 12: | ||
此の武蔵は、形・有様微妙き若人にてなむ有ける。然るべき人々、数仮借しけれども、思ひ上りて、男為でぞ有ける。然れども、此の平中、此く強に仮借しければ、女心に思ひ弱りて、遂に忍て会にけり。 | 此の武蔵は、形・有様微妙き若人にてなむ有ける。然るべき人々、数仮借しけれども、思ひ上りて、男為でぞ有ける。然れども、此の平中、此く強に仮借しければ、女心に思ひ弱りて、遂に忍て会にけり。 | ||
- | 其の朝(つとめて)、平中、返けるきに((底本頭注「返リケルキニハ返リケルニノ誤カ))、文も遣(おこ)せざりければ、女、心苦しく思て、人知れず夕さりまで待けれども、来ざりければ、女、其の夜、「踈(う)し」と思ひ明しけるに、亦の日も文も遣せず。亦其の夜も来ず成にければ、其の朝仕ふ者共など、「糸泛々(あだあだ)しく御すと聞渡る人を、吝((底本異体字 「[[𠫤|http:// | + | 其の朝(つとめて)、平中、返けるきに((底本頭注「返リケルキニハ返リケルニノ誤カ))、文も遣(おこ)せざりければ、女、心苦しく思て、人知れず夕さりまで待けれども、来ざりければ、女、其の夜、「踈(う)し」と思ひ明しけるに、亦の日も文も遣せず。亦其の夜も来ず成にければ、其の朝仕ふ者共など、「糸泛々(あだあだ)しく御すと聞渡る人を、吝((底本異体字 「[[http:// |
其の夜も、「若や」と思て待けれども、来ざりけり。亦の日も遣せず。此て五六日に成ぬ。然れば、女、泣にのみ泣て、物も食はざりけり。仕ふ者共も思ひ歎て、「此て人に知られで止み給て、然りとて有べき事にも非ず。異有様をも為(せさ)せ給へかし」など云ける程に、女、人にも知らせで、髪を掻切て尼に成にけり。 | 其の夜も、「若や」と思て待けれども、来ざりけり。亦の日も遣せず。此て五六日に成ぬ。然れば、女、泣にのみ泣て、物も食はざりけり。仕ふ者共も思ひ歎て、「此て人に知られで止み給て、然りとて有べき事にも非ず。異有様をも為(せさ)せ給へかし」など云ける程に、女、人にも知らせで、髪を掻切て尼に成にけり。 |
text/k_konjaku/k_konjaku30-2.txt · 最終更新: 2017/08/22 17:05 by Satoshi Nakagawa