text:k_konjaku:k_konjaku29-33
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
最新のリビジョン両方とも次のリビジョン | |||
text:k_konjaku:k_konjaku29-33 [2015/03/20 19:47] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku29-33 [2015/05/13 01:36] – [巻29第33話 肥後国鷲咋殺蛇語 第卅三] Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 9: | 行 9: | ||
巻て、尚残たる尾を以て、鷲の片足を三返り許巻て、縛る様にすれば、毛は上て蛇は沈みて、鷲の細く成許に、強く巻き辛む。 | 巻て、尚残たる尾を以て、鷲の片足を三返り許巻て、縛る様にすれば、毛は上て蛇は沈みて、鷲の細く成許に、強く巻き辛む。 | ||
- | 其の時に、鷲、目を打見開て有に、觜を呑まれたれば、目を塞て、亦寝入ぬ。此れを見る人、「此の鷲は、此の蛇に蕩(とらか)されにたるにこそ有めれ。此の鷲は死むとす。去来(いざ)打放てむ」など云ふ者も有り。亦、「極き事有とも、其の鷲、蛇に蕩されじ。只為む様を見よ」と云ふ人も有ければ、此(と)も彼(かく)も為で見ける程に、鷲、亦目を見開て、顔を此彼篩(ふるへ)るに、觜を本まで呑て下様に引下る様に為れば、其の時に、鷲、巻かれぬ方の足を持上て、頸肩の程まで巻たる蛇を、鷲爪を以って攫((底本異体字。𤔩【爪+國】))(つかみ)て、急(き)と引て踏つれば、觜を呑たりつる蛇の頸も抜けて離れぬ。亦、巻かれたる片足を持上て、翼懸て巻れたるを、亦攫((底本異体字。𤔩【爪+國】))て、初の如く引て、亦踏へつ。 | + | 其の時に、鷲、目を打見開て有に、觜を呑まれたれば、目を塞て、亦寝入ぬ。此れを見る人、「此の鷲は、此の蛇に蕩(とらか)されにたるにこそ有めれ。此の鷲は死むとす。去来(いざ)打放てむ」など云ふ者も有り。亦、「極き事有とも、其の鷲、蛇に蕩されじ。只為む様を見よ」と云ふ人も有ければ、此(と)も彼(かく)も為で見ける程に、鷲、亦目を見開て、顔を此彼篩(ふるへ)るに、觜を本まで呑て下様に引下る様に為れば、其の時に、鷲、巻かれぬ方の足を持上て、頸肩の程まで巻たる蛇を、鷲爪を以って爴(つかみ)て、急(き)と引て踏つれば、觜を呑たりつる蛇の頸も抜けて離れぬ。亦、巻かれたる片足を持上て、翼懸て巻れたるを、亦爴て、初の如く引て、亦踏へつ。 |
- | 然て、前の度、攫((底本異体字。𤔩【爪+國】))たりつる所を、持上げてふつりと咋切(くひきり)つ。然れば、蛇の頭の方、一尺許切れぬ。亦、後に攫((底本異体字。𤔩【爪+國】))たりつるを、足を持上げて、亦咋切つ。然て、亦足巻たりつる残を咋切つ。 | + | 然て、前の度、爴たりつる所を、持上げてふつりと咋切(くひきり)つ。然れば、蛇の頭の方、一尺許切れぬ。亦、後に爴たりつるを、足を持上げて、亦咋切つ。然て、亦足巻たりつる残を咋切つ。 |
此く三切れに咋切て、觜を以て咋つつ、前に指置て、身篩打し翼䟽(つくろひ)し尾など打振て、露事したりとも思たらで有ければ、此れを見る者(も)の共、彼の「よも鷲蛇に蕩されじ」と云つる者は、「然ればこそ、極き事有とも、蕩されなむや。此れは、物の王なれば、尚魂は余の獣には殊なる者也」など云てぞ、讃め喤ける。 | 此く三切れに咋切て、觜を以て咋つつ、前に指置て、身篩打し翼䟽(つくろひ)し尾など打振て、露事したりとも思たらで有ければ、此れを見る者(も)の共、彼の「よも鷲蛇に蕩されじ」と云つる者は、「然ればこそ、極き事有とも、蕩されなむや。此れは、物の王なれば、尚魂は余の獣には殊なる者也」など云てぞ、讃め喤ける。 |
text/k_konjaku/k_konjaku29-33.txt · 最終更新: 2019/09/02 11:24 by Satoshi Nakagawa