text:k_konjaku:k_konjaku28-36
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text:k_konjaku:k_konjaku28-36 [2015/02/22 23:00] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku28-36 [2015/02/23 18:33] – [巻28第36話 比叡山無動寺義清阿闍梨嗚呼絵語 第卅六] Satoshi Nakagawa | ||
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其れに、此の阿闍梨は、嗚呼絵(をこゑ)は筆つきは□□に書けども、其れは皆、嗚呼絵の気色無し。此の阿闍梨の書たるは、筆墓無く立たる様なれども、只一筆に書たるに、心地の艶(えもいはず)見ゆるは、可咲き事限無し。 | 其れに、此の阿闍梨は、嗚呼絵(をこゑ)は筆つきは□□に書けども、其れは皆、嗚呼絵の気色無し。此の阿闍梨の書たるは、筆墓無く立たる様なれども、只一筆に書たるに、心地の艶(えもいはず)見ゆるは、可咲き事限無し。 | ||
- | 然れども、更に□□にては書かず。態と紙継て書(かか)する人有れば、只物一つ許をぞ書ける。亦、人書せければ、端に弓射たる人の形を書て、奥の畢に的をなむ書たりけり。中には箭の行く形と思しくて、墨をなむ細く引渡したりける。然れば、書する人は、「書かじ」とは云ずして、紙に墨を引渡したれば、「異物も否書かまじ」とてぞ、極く腹立ける。然れども、事にも為でぞ有ける。 | + | 然れども、更に□□にては書かず。態と紙継て書(かか)する人有れば、只物一つ許をぞ書ける。亦、人、書せければ、端に弓射たる人の形を書て、奥の畢に的をなむ書たりけり。中には箭の行く形と思しくて、墨をなむ細く引渡したりける。然れば、書する人は、「書かじ」とは云ずして、紙に墨を引渡したれば、「異物も否書かまじ」とてぞ、極く腹立ける。然れども、事にも為でぞ有ける。 |
少し僻者(ひがもの)にて有しかば、世の人にも受けられでなむ有し。只、世に並無き嗚呼絵の上手と云ふ名を立て、真言吉く習て貴き者とは、人に知られでなむ有し。彼が有様、吉く知たる人こそ、止事無き者とは知たれ、然らぬ人は、只嗚呼絵書とのみなむ知たりし。 | 少し僻者(ひがもの)にて有しかば、世の人にも受けられでなむ有し。只、世に並無き嗚呼絵の上手と云ふ名を立て、真言吉く習て貴き者とは、人に知られでなむ有し。彼が有様、吉く知たる人こそ、止事無き者とは知たれ、然らぬ人は、只嗚呼絵書とのみなむ知たりし。 |
text/k_konjaku/k_konjaku28-36.txt · 最終更新: 2018/05/30 16:26 by Satoshi Nakagawa