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text:k_konjaku:k_konjaku28-35 [2015/02/22 16:24] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku28-35 [2015/02/22 16:28] (現在) – [巻28第35話 右近馬場殿上人種合語 第卅五] Satoshi Nakagawa
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 半許に成る程に、左の方より、近衛舎人下野の公忠が盛の御随身にて有ける時に、左の競馬の装束の微妙きを着せて、艶ぬ馬に微妙き平文の移(うつし)を置て、其れに乗せて方屋の南より馬場に打出たり。実に、諸の人、此れを見るに、尤も興有り。 半許に成る程に、左の方より、近衛舎人下野の公忠が盛の御随身にて有ける時に、左の競馬の装束の微妙きを着せて、艶ぬ馬に微妙き平文の移(うつし)を置て、其れに乗せて方屋の南より馬場に打出たり。実に、諸の人、此れを見るに、尤も興有り。
  
-埒の内に打廻て、鞭を取り直して立たてる程に、右の方屋より打出たる者有り。見れば、老法師の極気(いみじげ)なるに、□たる冠をせさせて、狗の耳垂たる様なる老懸をせさせて、右の競馬の装束の旧く弊(つたな)きをせさせて、枯鮭を太刀に帯(は)げて、装束をも片喎(かたゆがめ)下腰にせさせて、袴は踏含(ふみくくま)せて、帞袼(まかう)も猿楽の様なるを、女牛に結鞍と云物を置て、其れに乗せて出したり。公忠、此れを見て、大きに嗔て、「由(よ)し無き殿原の宣ふ事に付て、此る恥を見つる」と云て、棄て打入ぬ。+埒の内に打廻て、鞭を取り直して立たてる程に、右の方屋より打出たる者有り。見れば、老法師の極気(いみじげ)なるに、□たる冠をせさせて、狗の耳垂たる様なる老懸をせさせて、右の競馬の装束の旧く弊(つたな)きをせさせて、枯鮭を太刀に帯(は)げて、装束をも片喎(かたゆがめ)下腰にせさせて、袴は踏含(ふみくくま)せて、帞袼(まかう)も猿楽の様なるを、女牛に結鞍と云物を置て、其れに乗せて出したり。公忠、此れを見て、大きに嗔て、「由(よ)し無き殿原の宣ふ事に付て、此る恥を見つる」と云て、棄て打入ぬ。
  
 其の時に、右の方に、公忠が嗔て入るを見て、手を扣て咲ひ合たる事限無し。相撲の負て入るを咲ふが如し。咲ふと等しく、右の方に乱声を発して、落蹲の楽をして、落蹲の舞を出す。本より勝負の舞、有べき支度にて、左にも陵王の舞を儲たりけれども、未だ畢てぬに、此く落蹲を出せば、左には「何為る事ぞ」など云ひ合たるに、関白殿、忍て女車の様にて御覧じけるに、此く落蹲の出るを、「奇異也」と思食て、忽に人を召て、「其の落蹲の舞人、慥に搦めよ」と高く仰せ給ふ時に、落蹲の舞人、踊て入ぬ。 其の時に、右の方に、公忠が嗔て入るを見て、手を扣て咲ひ合たる事限無し。相撲の負て入るを咲ふが如し。咲ふと等しく、右の方に乱声を発して、落蹲の楽をして、落蹲の舞を出す。本より勝負の舞、有べき支度にて、左にも陵王の舞を儲たりけれども、未だ畢てぬに、此く落蹲を出せば、左には「何為る事ぞ」など云ひ合たるに、関白殿、忍て女車の様にて御覧じけるに、此く落蹲の出るを、「奇異也」と思食て、忽に人を召て、「其の落蹲の舞人、慥に搦めよ」と高く仰せ給ふ時に、落蹲の舞人、踊て入ぬ。
text/k_konjaku/k_konjaku28-35.1424589872.txt.gz · 最終更新: 2015/02/22 16:24 by Satoshi Nakagawa