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text:k_konjaku:k_konjaku26-11 [2014/12/17 23:23] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku26-11 [2014/12/17 23:23] (現在) – [巻26第11話 参河国始犬頭糸語 第十一] Satoshi Nakagawa
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 然て、犬、蚕を食て呑入て、向ひ居たれば、「蚕一つをだに養得で、宿世也けり」と思ふに哀れに悲くて、犬に向て泣居たる程に、此の犬、鼻をひたるに、鼻の二つの穴より、白き糸二筋、一寸許にて指出たり。此れを見に怪くて、其の糸を取て引ば、二筋乍ら絡々(くるくる)と長く出来れば、籰(わく)に巻付く。其の籰に多く巻取つれば、亦異籰に巻に、亦□□□□ぬれば、亦異籰を取出て巻取る。 然て、犬、蚕を食て呑入て、向ひ居たれば、「蚕一つをだに養得で、宿世也けり」と思ふに哀れに悲くて、犬に向て泣居たる程に、此の犬、鼻をひたるに、鼻の二つの穴より、白き糸二筋、一寸許にて指出たり。此れを見に怪くて、其の糸を取て引ば、二筋乍ら絡々(くるくる)と長く出来れば、籰(わく)に巻付く。其の籰に多く巻取つれば、亦異籰に巻に、亦□□□□ぬれば、亦異籰を取出て巻取る。
  
-此の如して、二三百の籰に巻取に、尽もせねば、竹の棹渡して渡の((底本、「渡の」に鉤括弧。頭注に、「渡ノノ二字ハ衍カ」とある。)絡懸く。尚、其にも尽せねば、桶共に巻く。四五千両許巻取て後、糸の畢(はて)絡出られぬれば、犬倒て死ぬ。其の時に、妻、「此れは仏神の犬に成て助け給ふ也けり」と思て、屋の後に有る畠の桑の木生たる本に、犬をば埋つ。+此の如して、二三百の籰に巻取に、尽もせねば、竹の棹渡して渡の((底本、「渡の」に鉤括弧。頭注に、「渡ノノ二字ハ衍カ」とある。))絡懸く。尚、其にも尽せねば、桶共に巻く。四五千両許巻取て後、糸の畢(はて)絡出られぬれば、犬倒て死ぬ。其の時に、妻、「此れは仏神の犬に成て助け給ふ也けり」と思て、屋の後に有る畠の桑の木生たる本に、犬をば埋つ。
  
 然て、此の糸をば細め、遣るべき方無して、繚(わづら)ふ程に、夫の郡司、物へ行とて、其の門の前を渡ければ、家の極て□気にて、人気色もなければ、□□に哀れと思て、「此に有し人、何にして有らむ」と、糸惜く思ければ、馬より下て、家に入たるに、人もなし。只、妻一人、多の糸を繚(いとより)居たり。此れを見るに、我が家に蚕を養富(かひまうけ)て絡懸る糸は黒し。節有て弊(わろ)し。此の糸は、雪の如く白して、光有て微妙き事限無し。此の世に類ひなし。 然て、此の糸をば細め、遣るべき方無して、繚(わづら)ふ程に、夫の郡司、物へ行とて、其の門の前を渡ければ、家の極て□気にて、人気色もなければ、□□に哀れと思て、「此に有し人、何にして有らむ」と、糸惜く思ければ、馬より下て、家に入たるに、人もなし。只、妻一人、多の糸を繚(いとより)居たり。此れを見るに、我が家に蚕を養富(かひまうけ)て絡懸る糸は黒し。節有て弊(わろ)し。此の糸は、雪の如く白して、光有て微妙き事限無し。此の世に類ひなし。
text/k_konjaku/k_konjaku26-11.1418826183.txt.gz · 最終更新: 2014/12/17 23:23 by Satoshi Nakagawa