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text:k_konjaku:k_konjaku25-4 [2014/10/22 04:29] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku25-4 [2014/10/26 13:30] (現在) – [巻25第4話 平維茂郎等被殺語 第四] Satoshi Nakagawa
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 今昔、上総守平兼忠と云ふ者有けり。此れは平貞盛と云ける兵の弟の繁茂が子也。 今昔、上総守平兼忠と云ふ者有けり。此れは平貞盛と云ける兵の弟の繁茂が子也。
  
-其の兼忠、上総守にて有ける時に、其の国に有けるに、五将軍維茂と云ふ者は此の兼忠が子にて有けるが、陸奥国に居たりければ、父の兼忠が上総に有るに、「久く見奉らずに、此く上総守に成て下り給たれば、喜び乍ら参(まゐらん)」と云ひ遣(おこ)せたりければ、兼忠も喜て、其の儲を営て、「何(いつ)しか」と待つに、館の人、「既に此に御座したり」と云ひ騒げば、其の時に、風発て、外には出ずして、簾の内に寄り臥して、入れ立て仕ふ小侍の男を以て、腰を叩かせて臥たる程に、維茂来ぬ。前の広庇に居て、年来の不審(おぼつかな)き事など云ふに、維茂が郎等の宗と有る者共五六人許、調度を負て、前の庭に居並たり。+其の兼忠、上総守にて有ける時に、其の国に有けるに、五将軍維茂と云ふ者は此の兼忠が子にて有けるが、陸奥国に居たりければ、父の兼忠が上総に有るに、「久く見奉らずに、此く上総守に成て下り給たれば、喜び乍ら参(まゐらん)」と云ひ遣(おこ)せたりければ、兼忠も喜て、其の儲を営て、「何(いつ)しか」と待つに、館の人、「既に此に御座したり」と云ひ騒げば、其の時に、風発て、外には出ずして、簾の内に寄り臥して、入れ立て仕ふ小侍の男を以て、腰を叩かせて臥たる程に、維茂来ぬ。前の広庇に居て、年来の不審(おぼつかな)き事など云ふに、維茂が郎等の宗と有る者共五六人許、調度を負て、前の庭に居並たり。
  
 其の第一に居たる者は、字をば太郎介と云ふ。年五十余許の男の、大きに太りて、鬚長く鑭(きらめ)く。怖し気也。現に吉き兵かなと見へたり。兼忠、此れを見て、腰叩く男に、「彼(あ)れをば見知たりや」と問へば、男、知らぬ由を答ふ。兼忠、「彼れは、汝が父、先年に殺てし者(も)のぞ。其の時は汝が未だ幼かりしかば、何(いかで)かは知らむ」と云へば、男、「父、人に殺されにけりとは人申せども、誰が殺たるとも知り候はぬに、此く顔を見知り候たるこそ」と云ままに、目に涙を浮べて、立て去ぬ。 其の第一に居たる者は、字をば太郎介と云ふ。年五十余許の男の、大きに太りて、鬚長く鑭(きらめ)く。怖し気也。現に吉き兵かなと見へたり。兼忠、此れを見て、腰叩く男に、「彼(あ)れをば見知たりや」と問へば、男、知らぬ由を答ふ。兼忠、「彼れは、汝が父、先年に殺てし者(も)のぞ。其の時は汝が未だ幼かりしかば、何(いかで)かは知らむ」と云へば、男、「父、人に殺されにけりとは人申せども、誰が殺たるとも知り候はぬに、此く顔を見知り候たるこそ」と云ままに、目に涙を浮べて、立て去ぬ。
text/k_konjaku/k_konjaku25-4.1413919795.txt.gz · 最終更新: 2014/10/22 04:29 by Satoshi Nakagawa