ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:k_konjaku:k_konjaku24-8

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

次のリビジョン
前のリビジョン
text:k_konjaku:k_konjaku24-8 [2014/07/25 03:53] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku24-8 [2018/08/16 17:56] (現在) Satoshi Nakagawa
行 1: 行 1:
 +今昔物語集
 ====== 巻24第8話 女行医師家治瘡逃語 第八 ====== ====== 巻24第8話 女行医師家治瘡逃語 第八 ======
  
行 5: 行 6:
 而る間、此の典薬頭に、極く装束仕たる女車の乗泛れたる入る。頭、此れを見て、「何くの車ぞ」と問ぬれども、答へも為ずして、只遣りに遣入れて、車を掻下して、車の頸木を蔀の木に打懸て、雑色共は門の許に寄て居ぬ。 而る間、此の典薬頭に、極く装束仕たる女車の乗泛れたる入る。頭、此れを見て、「何くの車ぞ」と問ぬれども、答へも為ずして、只遣りに遣入れて、車を掻下して、車の頸木を蔀の木に打懸て、雑色共は門の許に寄て居ぬ。
  
-其の時に、頭、車の許に寄て、「此れは誰が御しましたるにか。何事を仰せられに御座たるぞ」と問ば、車の内に其の人とは答えずして、「然べからむ所に局して下し給へ」と、愛敬付き可咲き気はひにて云へば、此の典薬頭は本より遣しく、物目出しける翁にて、内に角の間の人離れたる所を、俄に掃浄めて、屏風立て、畳敷などして、車の許に寄て、□□□たる由を云へば、女、「然らば去(のき)給へ」と云へば、頭、去て立るに、女、扇を差隠して居り下りぬ。車に「共の人乗りたらむ」と思ふに、亦人乗らず。女、下るままに、十五六歳許なる□□の女の童ぞ車の許に寄来て、車の内なる蒔絵の櫛の筥取て持来ぬれば、車が雑色共寄て、牛懸て、飛ぶが如くに□□の去ぬ。+其の時に、頭、車の許に寄て、「此れは誰が御しましたるにか。何事を仰せられに御座たるぞ」と問ば、車の内に其の人とは答えずして、「然べからむ所に局して下し給へ」と、愛敬付き可咲き気はひにて云へば、此の典薬頭は本より遣((底本頭注「遣シク一本スズロハシクニ作リ丹本等スキスキシクニ作ル))しく、物目出しける翁にて、内に角の間の人離れたる所を、俄に掃浄めて、屏風立て、畳敷などして、車の許に寄て、□□□たる由を云へば、女、「然らば去(のき)給へ」と云へば、頭、去て立るに、女、扇を差隠して居り下りぬ。車に「共の人乗りたらむ」と思ふに、亦人乗らず。女、下るままに、十五六歳許なる□□の女の童ぞ車の許に寄来て、車の内なる蒔絵の櫛の筥取て持来ぬれば、車が雑色共寄て、牛懸て、飛ぶが如くに□□の去ぬ。
  
 女房、のる□所に居ぬ。女の童は筥の櫛を裹て隠して、屏風の後に屈居ぬ。其の時、頭寄て、「此は何なる人の□何事仰されむずるぞ。疾く仰せられよ」と云へば、女房、「此入(こちいり)給へ。恥聞くまじ」と云へば、頭、簾の内に入ぬ。女房差向たるを見れば、年卅許なる女の、頭付より始て、目・鼻・口、此(ここ)は弊(わろ)しと見ゆる所無く端正なるが、髪極く長し。香馥(かうば)しく、艶(えなら)ぬ衣共を着たり。恥かしく思たる気色も無くて、年来の妹などの様に安らかに向ひたり。 女房、のる□所に居ぬ。女の童は筥の櫛を裹て隠して、屏風の後に屈居ぬ。其の時、頭寄て、「此は何なる人の□何事仰されむずるぞ。疾く仰せられよ」と云へば、女房、「此入(こちいり)給へ。恥聞くまじ」と云へば、頭、簾の内に入ぬ。女房差向たるを見れば、年卅許なる女の、頭付より始て、目・鼻・口、此(ここ)は弊(わろ)しと見ゆる所無く端正なるが、髪極く長し。香馥(かうば)しく、艶(えなら)ぬ衣共を着たり。恥かしく思たる気色も無くて、年来の妹などの様に安らかに向ひたり。
text/k_konjaku/k_konjaku24-8.1406227998.txt.gz · 最終更新: 2014/07/25 03:53 by Satoshi Nakagawa