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text:k_konjaku:k_konjaku24-5 [2014/09/14 01:46] Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku24-5 [2018/08/16 17:46] (現在) – [巻24第5話 百済川成飛騨工挑語 第五] Satoshi Nakagawa
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 ====== 巻24第5話 百済川成飛騨工挑語 第五 ====== ====== 巻24第5話 百済川成飛騨工挑語 第五 ======
  
-今昔、百済の川成と云ふ絵師有けり。世に並無き者にて有ける。滝殿の石も此の川成が立たる也けり。同き御堂の壁の絵も、此の川成が書たる也。+今昔、百済の川成((百済川成))と云ふ絵師有けり。世に並無き者にて有ける。滝殿の石も此の川成が立たる也けり。同き御堂の壁の絵も、此の川成が書たる也。
  
 而る間、川成、従者の童を逃しけり。東西を求めけるに、求得ざりければ、或高家の下部を雇て語ひて云く、「己が年来仕つる従者の童、既に逃たり。此れ尋て捕へて得させよ」と。下部の云く、「安事には有れども、童の顔を知たらばこそ搦めめ、顔を知らずしては何でか搦めむ」と。川成、「現に然る事也」と云て、畳紙を取出て、童の顔の限を書て、下部に渡して、「此れに似たらむ童を捕らふべき也。東西の市は人集る所也。其の辺に行て伺ふべき也」と云へば、下部、其の顔の形を取て、即ち市に行ぬ。 而る間、川成、従者の童を逃しけり。東西を求めけるに、求得ざりければ、或高家の下部を雇て語ひて云く、「己が年来仕つる従者の童、既に逃たり。此れ尋て捕へて得させよ」と。下部の云く、「安事には有れども、童の顔を知たらばこそ搦めめ、顔を知らずしては何でか搦めむ」と。川成、「現に然る事也」と云て、畳紙を取出て、童の顔の限を書て、下部に渡して、「此れに似たらむ童を捕らふべき也。東西の市は人集る所也。其の辺に行て伺ふべき也」と云へば、下部、其の顔の形を取て、即ち市に行ぬ。
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 人、極て多かりと云へども、此れに似たる童無し。暫く居て、「若や」と思ふ程に、此れに似たる童出来ぬ。其の形を取出して競ぶるに、露違たる所無し。「此れ也けり」と搦めて、川成が許に将行ぬ。川成、此れを得て見るに、其の童、極く喜びけり。其の比、此れを聞く人、極き事になむ云ける。 人、極て多かりと云へども、此れに似たる童無し。暫く居て、「若や」と思ふ程に、此れに似たる童出来ぬ。其の形を取出して競ぶるに、露違たる所無し。「此れ也けり」と搦めて、川成が許に将行ぬ。川成、此れを得て見るに、其の童、極く喜びけり。其の比、此れを聞く人、極き事になむ云ける。
  
-而るに、其の比、飛騨の工と云ふ工有けり。都遷の時の工也。世に並無き者也。武楽院は其の工の起たれば、微妙なるべし。+而るに、其の比、飛騨の工((飛騨工))と云ふ工有けり。都遷の時の工也。世に並無き者也。武楽院は其の工の起たれば、微妙なるべし。
  
 而る間、此の工、彼の川成となむ各其の態を挑にける。飛騨の工、川成に云く、「我が家に一間四面の堂をなむ起たる。御して見給へ。亦、『壁に絵など書て得させ給へ』となむ思ふ」と。互に挑み乍ら、中吉くてなむ戯れければ、「此く云ふ事也」とて、川成、飛騨の工が家に行ぬ。 而る間、此の工、彼の川成となむ各其の態を挑にける。飛騨の工、川成に云く、「我が家に一間四面の堂をなむ起たる。御して見給へ。亦、『壁に絵など書て得させ給へ』となむ思ふ」と。互に挑み乍ら、中吉くてなむ戯れければ、「此く云ふ事也」とて、川成、飛騨の工が家に行ぬ。
text/k_konjaku/k_konjaku24-5.1410626808.txt.gz · 最終更新: 2014/09/14 01:46 by Satoshi Nakagawa