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text:k_konjaku:k_konjaku24-32 [2014/09/15 16:02] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku24-32 [2014/09/15 16:03] – [巻24第32話 敦忠中納言南殿桜読和歌語 第卅二] Satoshi Nakagawa
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 ====== 巻24第32話 敦忠中納言南殿桜読和歌語 第卅二 ====== ====== 巻24第32話 敦忠中納言南殿桜読和歌語 第卅二 ======
  
-今昔、小野宮の大き大臣、左大臣にて御座ける時、三月の中旬の比、公事に依て内に参り給て、陣の座に御座けるに、上達部二三人許参り会て候はれけるに、南殿の御前の桜の器(うつぼ)の大きに神さびて艶(えなら)ぬが、枝も庭まで差覆ておもしろ((底本、言偏に慈))く栄(さき)て、庭に隙無く積て、風に吹き立てられつつ、水の浪などの様に見へけるを、大臣「艶ぬおもしろ((底本、言偏に慈))き物かな。例は極く栄けど、糸此る年は無き者を、土御門の参られよかし。此れを見せばや」と宣ふ程に、遥に上達部の前を追ふ音有り。官人を召て、「此の前は誰が参らるるぞ」と問ひ給ければ、「土御門の権中納言の参らせ給ふ也」と申しければ、大臣、「極く興有る琴かな」と喜び給ふ程に、中納言参て、座に居るや遅きと、大臣、「此の花の庭に散たる様は、何が見給ふ」と有ければ、中納言、「現におもしろ((底本言偏に慈))ふ候ふ」と申し給ふに、大臣、「然らば遅くこそ侍れ」と有ければ、中納言、心に思給ひける様、「此の大臣は、只今の和歌に極たる人に御座す。其れに墓々しくも無からむ事を、面無く打出でたらむは、有らむよりは極く弊(わろ)かるべし。然りとて、止事無き人の書く責め給ふ事を冷(すさまじ)くて止むも便無かるべし」と思て、袖を掻疏(かいつくろ)ひて、此れなむ申し上ける。+今昔、小野宮の大き大臣、左大臣にて御座ける時、三月の中旬の比、公事に依て内に参り給て、陣の座に御座けるに、上達部二三人許参り会て候はれけるに、南殿の御前の桜の器(うつぼ)の大きに神さびて艶(えなら)ぬが、枝も庭まで差覆ておもしろ((底本、言偏に慈))く栄(さき)て、庭に隙無く積て、風に吹き立てられつつ、水の浪などの様に見へけるを、大臣「艶ぬおもしろ((底本、言偏に慈))き物かな。例は極く栄けど、糸此る年は無き者を、土御門の参られよかし。此れを見せばや」と宣ふ程に、遥に上達部の前を追ふ音有り。官人を召て、「此の前は誰が参らるるぞ」と問ひ給ければ、「土御門の権中納言の参らせ給ふ也」と申しければ、大臣、「極く興有る琴かな」と喜び給ふ程に、中納言参て、座に居るや遅きと、大臣、「此の花の庭に散たる様は、何が見給ふ」と有ければ、中納言、「現におもしろ((底本言偏に慈))ふ候ふ」と申し給ふに、大臣、「然らば遅くこそ侍れ」と有ければ、中納言、心に思給ひける様、「此の大臣は、只今の和歌に極たる人に御座す。其れに墓々しくも無からむ事を、面無く打出でたらむは、有らむよりは極く弊(わろ)かるべし。然りとて、止事無き人の書く責め給ふ事を冷(すさまじ)くて止むも便無かるべし」と思て、袖を掻疏(かいつくろ)ひて、此れなむ申し上ける。
  
   とのもりのとものみやつこ心あらばこの春ばかりあさぎよめすな   とのもりのとものみやつこ心あらばこの春ばかりあさぎよめすな
text/k_konjaku/k_konjaku24-32.txt · 最終更新: 2019/12/22 13:12 by Satoshi Nakagawa