text:k_konjaku:k_konjaku23-22
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:k_konjaku:k_konjaku23-22 [2014/07/15 15:10] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku23-22 [2018/02/07 02:44] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
- | ====== 巻23第22話 相撲人海恒世会蛇試力語 第(十六) ====== | + | 今昔物語集 |
+ | ====== 巻23第22話 相撲人海恒世会蛇試力語 第(廿二) ====== | ||
- | 今昔、丹後の国に恒世と云ふ右の相撲人有けり。其の恒世が住ける家の傍に旧河有けるが、深き淵にて有ける所に、夏比、恒世其の旧河の汀近く、木景の有りけるに、帷(かたびら)許を着て、中結て、足駄を履きて、杈杖(またぶりづゑ)と云ふ物を突て、小童一人許を共に具して、此彼冷(とかくすずみ)に行ける次でに、其の淵の傍の木の下に行けり。 | + | 今昔、丹後の国に海の恒世と云ふ右の相撲人有けり。其の恒世が住ける家の傍に旧河有けるが、深き淵にて有ける所に、夏比、恒世其の旧河の汀近く、木景の有りけるに、帷(かたびら)許を着て、中結て、足駄を履きて、杈杖(またぶりづゑ)と云ふ物を突て、小童一人許を共に具して、此彼冷(とかくすずみ)に行ける次でに、其の淵の傍の木の下に行けり。 |
淵青く恐しげに底も見へず。葦た薦など生たりけるを見て、立てりけるに、淵の彼方の岸の、三丈許は去(のき)たらむと見ゆるに、水のみなぎりて、此方様に来ければ、恒世、「何の為るにか有らむ」と思て見る程に、此方の汀近く成て、大なる蛇の水より頭を指出たりければ、恒世、此れを見て「此の蛇の頭の程を見るに、大きならむかし。此方様に上らむずるにや有らむ」と見立りける程に、蛇の貌を指出て、暫く恒世を守ければ、恒世、「我を此の蛇は何にか思ふにか」と思て、汀四五尺許去て、動かで立て見ければ、蛇、暫許(とばかり)守り守りて、頭を水に引入てけり。 | 淵青く恐しげに底も見へず。葦た薦など生たりけるを見て、立てりけるに、淵の彼方の岸の、三丈許は去(のき)たらむと見ゆるに、水のみなぎりて、此方様に来ければ、恒世、「何の為るにか有らむ」と思て見る程に、此方の汀近く成て、大なる蛇の水より頭を指出たりければ、恒世、此れを見て「此の蛇の頭の程を見るに、大きならむかし。此方様に上らむずるにや有らむ」と見立りける程に、蛇の貌を指出て、暫く恒世を守ければ、恒世、「我を此の蛇は何にか思ふにか」と思て、汀四五尺許去て、動かで立て見ければ、蛇、暫許(とばかり)守り守りて、頭を水に引入てけり。 | ||
行 11: | 行 12: | ||
其の後、「蛇の力の程、人何(いく)ら許の力にか有けると試む」と思て、大きなる縄を以て、蛇の巻たりける様に、恒世が足に付て、人十人許を付て引せけれども、「尚彼れ許は無し」とて、三人寄せ、五人寄せなど付つ引せたれども、「尚足らず」「足らず」と云て、六十人許り懸りて引ける時になむ、「此許(かばかり)ぞ思へし」と恒世云けり。 | 其の後、「蛇の力の程、人何(いく)ら許の力にか有けると試む」と思て、大きなる縄を以て、蛇の巻たりける様に、恒世が足に付て、人十人許を付て引せけれども、「尚彼れ許は無し」とて、三人寄せ、五人寄せなど付つ引せたれども、「尚足らず」「足らず」と云て、六十人許り懸りて引ける時になむ、「此許(かばかり)ぞ思へし」と恒世云けり。 | ||
- | 此れを思ふに、恒世が力は、百人許が力を持たりけるとなむ思ゆる。此れ稀有の事也。昔は此る力有る相撲人も有けりとなむ語り伝へたるとや。 | + | 此れを思ふに、恒世が力は、百人許が力を持たりけるとなむ思ゆる。此れ希有の事也。昔は此る力有る相撲人も有けりとなむ語り伝へたるとや。 |
text/k_konjaku/k_konjaku23-22.1405404630.txt.gz · 最終更新: 2014/07/15 15:10 by Satoshi Nakagawa