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text:k_konjaku:k_konjaku23-15 [2014/07/06 02:23] Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku23-15 [2015/01/09 17:29] – [巻23第15話 陸奥前司橘則光切殺人語 第(十五)] Satoshi Nakagawa
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 +今昔物語集
 ====== 巻23第15話 陸奥前司橘則光切殺人語 第(十五) ====== ====== 巻23第15話 陸奥前司橘則光切殺人語 第(十五) ======
  
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 と思ふ程に、亦「彼れは何がしたる事ぞ」と云て、走り懸て来る者有り。然れば太刀をもえ指敢へずして、脇に挟て逃るを、「けやけき奴かな」と云て、走り懸りて来る者の、初めの者よりは足疾く思へければ、「此れをばよも有つる様には為られじ」と思て、俄に忿り突居たれば、走り早まりたる者、我れに蹴躓(けつまづき)て倒たるを、違て立ち上て起し立てず、頭を打破てけり。 と思ふ程に、亦「彼れは何がしたる事ぞ」と云て、走り懸て来る者有り。然れば太刀をもえ指敢へずして、脇に挟て逃るを、「けやけき奴かな」と云て、走り懸りて来る者の、初めの者よりは足疾く思へければ、「此れをばよも有つる様には為られじ」と思て、俄に忿り突居たれば、走り早まりたる者、我れに蹴躓(けつまづき)て倒たるを、違て立ち上て起し立てず、頭を打破てけり。
  
-「今は此くなめり」と思程に、今一人有ければ、「けやけき奴かな。然てはえ罷らじ」と云て、走り懸て、疾く来ければ、「此の度は被錯(あやまたれ)なむと為る。神仏助け給へ」と、太刀を鉾の様に取成して、走り早まりたる者に俄に立向ひければ、腹を合せて走り当りぬ。彼も太刀を持て切らむとしけれども、余り近くて衣だに切られで、鉾の様に持たる太刀なれば、受けられて中より通にけるを、太刀の杷((底本異体字。木偏に覇))(つか)を返しければ、仰様(のけざま)に倒にけるを、太刀を引抜て切ければ、彼れが太刀抜たりける方の肱(かひな)を肩より打落してけり。+「今は此くなめり」と思程に、今一人有ければ、「けやけき奴かな。然てはえ罷らじ」と云て、走り懸て、疾く来ければ、「此の度は被錯(あやまたれ)なむと為る。神仏助け給へ」と、太刀を鉾の様に取成して、走り早まりたる者に俄に立向ひければ、腹を合せて走り当りぬ。彼も太刀を持て切らむとしけれども、余り近くて衣だに切られで、鉾の様に持たる太刀なれば、受けられて中より通にけるを、太刀の𣠽(つか)を返しければ、仰様(のけざま)に倒にけるを、太刀を引抜て切ければ、彼れが太刀抜たりける方の肱(かひな)を肩より打落してけり。
  
 然て、走去(はしりのき)て、「亦や人や有る」と聞けれども、音も無かりければ、走廻て、中の御門に入りて柱に掻副て立て、「小舎人童は何がしつらむ」と待たるに、童、大宮を上(のぼり)に、泣々く行(あるき)けるを、呼ければ、走り来けり。 然て、走去(はしりのき)て、「亦や人や有る」と聞けれども、音も無かりければ、走廻て、中の御門に入りて柱に掻副て立て、「小舎人童は何がしつらむ」と待たるに、童、大宮を上(のぼり)に、泣々く行(あるき)けるを、呼ければ、走り来けり。
text/k_konjaku/k_konjaku23-15.txt · 最終更新: 2017/12/23 03:08 by Satoshi Nakagawa