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text:k_konjaku:k_konjaku20-39 [2016/03/21 16:34] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku20-39 [2016/03/21 16:35] (現在) – [巻20第39話 清滝河奥聖人成慢悔語 第卅九] Satoshi Nakagawa | ||
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其の時に、庵の聖人、睡り醒て、目を見開て、此れを見て、亦散杖を香水に差し浸して、此の焼迷ふ僧の頭に灑ぐ。其の時、火消ぬれば、庵の聖人、寄り来り、「何ぞの御房の座して、此る目を見給ふぞ」と云ければ、下の僧、答て云く、「年来、吉野河の辺に庵室を造て行ふ修行者聖人に候ふ。而るに、水上より、常に水瓶飛び来て水を汲しを、怪しく見給へて、『何なる人の水瓶にか有らむ』と尋ねに参りたるに、御つるを見給て、『試み申さむ』と思て、加持し申つるに、此く極(いみじ)き目を見給へつれば、返々す貴く忝く思ひ奉る。今は御弟子と成て仕れむ((底本頭注「仕レム一本仕ヘムニ作ル」))」と云ければ、庵の聖人、「糸吉き事也」と云て、目を見延て、此の僧を何(いか)にも思たる気色にも無くて有ける。 | 其の時に、庵の聖人、睡り醒て、目を見開て、此れを見て、亦散杖を香水に差し浸して、此の焼迷ふ僧の頭に灑ぐ。其の時、火消ぬれば、庵の聖人、寄り来り、「何ぞの御房の座して、此る目を見給ふぞ」と云ければ、下の僧、答て云く、「年来、吉野河の辺に庵室を造て行ふ修行者聖人に候ふ。而るに、水上より、常に水瓶飛び来て水を汲しを、怪しく見給へて、『何なる人の水瓶にか有らむ』と尋ねに参りたるに、御つるを見給て、『試み申さむ』と思て、加持し申つるに、此く極(いみじ)き目を見給へつれば、返々す貴く忝く思ひ奉る。今は御弟子と成て仕れむ((底本頭注「仕レム一本仕ヘムニ作ル」))」と云ければ、庵の聖人、「糸吉き事也」と云て、目を見延て、此の僧を何(いか)にも思たる気色にも無くて有ける。 | ||
- | 下の僧は、「我れ智り無くして、憍慢の心を成(なせ)るを、三宝の悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))しと思て、此る増(まさ)る聖人に値はせ給也けり」と悔ひ悲びて、本の庵に返りけり。 | + | 下の僧は、「我れ智り無くして、憍慢の心を成(なせ)るを、三宝の「悪((「にく」底本異体字。りっしんべんに惡))し」と思て、此る増(まさ)る聖人に値はせ給也けり」と悔ひ悲びて、本の庵に返りけり。 |
然れば、人、我が身賢しと思て、憍慢を成すべからずとなむ、語り伝へたるとや。 | 然れば、人、我が身賢しと思て、憍慢を成すべからずとなむ、語り伝へたるとや。 | ||
text/k_konjaku/k_konjaku20-39.1458545673.txt.gz · 最終更新: 2016/03/21 16:34 by Satoshi Nakagawa