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text:k_konjaku:k_konjaku17-18 [2016/01/06 16:39] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku17-18 [2016/01/06 16:39] (現在) – [巻17第18話 備中国僧阿清衣地蔵助得活語 第十八] Satoshi Nakagawa
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 而る間、阿清、此れを見るに、身の毛竪(よだ)ち魂迷て、更に東西を忘れたり。稍左右を見れば、一人の小僧、手に錫杖を取り、并に一巻の文を持て、東西に走り行く。諍事有る気色也。亦、形ち美麗なる童子一人、此の小僧に随へり。 而る間、阿清、此れを見るに、身の毛竪(よだ)ち魂迷て、更に東西を忘れたり。稍左右を見れば、一人の小僧、手に錫杖を取り、并に一巻の文を持て、東西に走り行く。諍事有る気色也。亦、形ち美麗なる童子一人、此の小僧に随へり。
  
-阿清、歩び進て、此の童子に問て云く、『此の小僧は、此れ誰人ぞや』と。童子、答て云く、『汝ぢ知らずや。此れは地蔵菩薩に在ます』。阿清、此れを聞て、驚き恐れて、礼拝恭敬す。其の時に、小僧、阿清を見て、哀れむで宣く、『汝ぢ、此の所を出む事、只今也。何の故有てか、亦返り来れる』と云て、阿清を官人の前に将至て宣はく、『此の僧は既に如法の行者也。其の故は、生たる間、白山・立山と云ふ霊験((底本頭注「霊験ノ下所字ヲ脱セルカ」))に詣でて、自ら骨髄を振て、勤め行へる事、既に数度に及べり。此の外に諸の山を廻り、海を渡て仏道を修行する事、亦其の数有り。而るに、今、中夭の業縁に縛られて召されたる也。然ば、速に放免すべき也。委き事は此の僧の行業の日記に注されたり』と。官人等、此れを聞て、答て云く、『此の僧、実に其の勤有り。仰の旨に随て、速に免し遣すべし』と。阿清、此れを聞て、涙を流して、悲び貴ぶ事限無し。+阿清、歩び進て、此の童子に問て云く、『此の小僧は、此れ誰人ぞや』と。童子、答て云く、『汝ぢ知らずや。此れは地蔵菩薩に在ます』。阿清、此れを聞て、驚き恐れて、礼拝恭敬す。 
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 +其の時に、小僧、阿清を見て、哀れむで宣く、『汝ぢ、此の所を出む事、只今也。何の故有てか、亦返り来れる』と云て、阿清を官人の前に将至て宣はく、『此の僧は既に如法の行者也。其の故は、生たる間、白山・立山と云ふ霊験((底本頭注「霊験ノ下所字ヲ脱セルカ」))に詣でて、自ら骨髄を振て、勤め行へる事、既に数度に及べり。此の外に諸の山を廻り、海を渡て仏道を修行する事、亦其の数有り。而るに、今、中夭の業縁に縛られて召されたる也。然ば、速に放免すべき也。委き事は此の僧の行業の日記に注されたり』と。官人等、此れを聞て、答て云く、『此の僧、実に其の勤有り。仰の旨に随て、速に免し遣すべし』と。阿清、此れを聞て、涙を流して、悲び貴ぶ事限無し。
  
 小僧、阿清を引て、官舎の外に出でて、自ら教へて宣はく、『汝ぢ、早く本国に返て、善業を修して、亦、更に此の所に来る事無れ』と。阿清、此の如く聞くと思ふ程に、即ち活れりと思(おぼゆ)る」。 小僧、阿清を引て、官舎の外に出でて、自ら教へて宣はく、『汝ぢ、早く本国に返て、善業を修して、亦、更に此の所に来る事無れ』と。阿清、此の如く聞くと思ふ程に、即ち活れりと思(おぼゆ)る」。
text/k_konjaku/k_konjaku17-18.1452065945.txt.gz · 最終更新: 2016/01/06 16:39 by Satoshi Nakagawa